四半世紀


徹の家というよりも,徹と連れ立ってぷらんぷらんすることがほとんどなくなってしまったため,記憶は定かではないものの,最後に八王子のはずれにある実家へ行ったのは平成元年だったと思う。
冬のことだ。片倉と相原の中間あたり,猫が凍死しかねない寒さのなかを,伸浩のレヴィンに乗って夜なかに着いた。徹の父親が量販店の店先で「これちょうだい」と指さして買ったファミリアが路駐してある後ろ,レヴィンを路肩に寄せて停めた。街灯に照らされて,左側のガード下は谷に雑草がなだれ込むのが見えた。

谷を挟んで向こう岸には養鶏場があり,こちらの手前からは雉のような鳴き声がした。
「隣の家がくじゃくを飼っているんだ」
迎えに出てきた徹はそう話す。隣の家までは100メートルはある。くじゃくの鳴き声と言われてもピンとこない。とにかく寒かった。

先に来ていた昌己と4人で麻雀卓を囲み,帰路につくのは4時過ぎ,そんな週末が月に何度かあった。ときどきは国立あたりまで出かけたものの,麻雀荘で終電を逃すと,それも国立の終電過ぎなど,町があってないに等しいので,車で動かず始発まで何とか居場所を確保するのに精いっぱい,非道い週末を繰り返した。

先日,仕事で八王子みなみ野で降りた。宇津貫という地名を見て,はじめてここが徹の家のすぐ近くだということに気づいた。
気づいたけれど,四半世紀前,私たちがたどり着いた場所とは似ても似つかない。まったく別の町並みになっていた。あまりに変わりすぎていて笑ってしまった。

もう,くじゃくは鳴いていないのだろう。

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