Riff

The Kinksを聞いてショックを受けた平沢進は,ギターでソロをとらないと心に決めたと,どこかで語っていた。それはリフで勝負するということなのだろう。

他の誰かが,マーク・ボランとロバート・フリップのつくりだすリフが好きだと書いていたのを記憶しているのは私も同じだからだ。

ミュージシャンに能力の欠乏を決定的に感じるのは,魅力的なリフをつくれなくなったときからではないかと思う。

小説家にとって,1ページのなかに盛り込む文字のバランスは,ミュージシャンにとってのリフのようなものではないかと,ときどき思う。内田百間は生涯,見事にリフを刻みつづけ,昭和の終わりまでの矢作俊彦に同様のトーンを感じたのは,今でも間違いではないと思うのだ。

それはたぶん,小説と活版印刷の幸福な出会いがもたらしたもので,永遠に続くものではなかったと気づいたのは平成に入ってからのこと。Nothing lasts forever of that I’m sure.(Roxy Music)

版面の決まりごとが崩され,1ページに組まれる行数と1行の文字数が,さまざまに変化した。いきおい,文字のバランスは埒外に置かれている。だからといって,初手からポケミスやノベルズの判型を想定して書かれた小説は主客転倒しているように思えるからやっかいだ。

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