古本01

「ブルータス」の特集が「古本好き」だったので,つい買ってしまった。

金曜日に昌己とサワディーで夕飯をとったときに鞄のなかにはブックオフで105円で手に入れた『東京サイテー生活』(太田出版)が入っていて,メコンで酔いがまわったあたりで取り出してぺらぺらと眺める。登場する人物が住んでいるのは圧倒的に中央線沿線だ。

この本で刊行された当時,私は新井薬師,昌己も一時,高円寺に住んでいたし,徹は会社帰りに高円寺に寄る日々。住んでいたのは国分寺だ。以前に書いたとおり,平日の19時に偶然,高円寺の古本屋で徹と出くわし,なんだか気まずい感じだったことを覚えている。大学があった町でお互いにアパートを借りていたので,ほぼ毎日,出会っていたのと,これはまったく異なる。

「応募していたら,掲載されたかもな」
「徹のアパートの神棚とそこに置かれた原由子のポスターなんて,ネタだと思われるよ」

大学の頃だから,東京に住んでいたわけではないが,話される物語にやけに親近感を覚える。

「ブックオフで105円だものな。つい105円棚を眺めて,買っちゃうよ」

といいながら,ブックオフの前と後で変わったのは,古本の価値が新刊のほうに舵取りされたことだと思った。古い本,価値の高い本,稀覯本,そうした価値が古本屋のコードだったはずなのだ。それが,ブックオフに敷かれたコードは新しくきれいな本は高く(半額),ISBNやバーコードがついていない本は105円の棚に,それはパンクな考えかたではある。

でも,最近,ブックオフのコードは結局,負けてしまったのではないかと思う。

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