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106-50682GettingToAirport_600x260その年の夏の終わりのこと。そう,旅行に出かけるのはいつも夏の終わりだ。20代を折り返したものの,輝かしい未来が見えてくるはずもない。弟がミラノへ行ってしまってから2年近くが経っていた。長く抱えている仕事がいつ終わるかまだ見えてこない。そこで誰かがささやいた。イタリアはどうだろう。きっと面白いに違いない,と。

大韓航空機でソウル経由,アムステルダムを経てローマに着いたのは22時近くだった。

フィウミチーノ空港を出ると,白タクが列をなしていて,その中の1人が私に声をかける。幾らかと尋ねると返事はOKだけ,金額を言わずに1つだけしかないバッグをトランクに押し込もうとする。それを押しとどめた。ノートだったろうかに金額を書かせて確認したところ,ゼロ1つどころかとんでもない金額だ。後で確認したところ,フィウミチーノ空港からローマ市内までは35km,タクシーで行く距離じゃなかったのだ。自分でバッグを取り出してたぶんゼロを1つ消して,これでどうだと尋ねたら,首を横に振りあっさりと次の客を探しに消えた。

ガイドブックを手にテルミニ駅への列車を探す。このあたりの記憶はあいまいだ。地下鉄に乗って,最初,テルミニとは反対方向のホームに出てしまい,向かいのホームにいた人に確認しあわてて向かいのホームに行ったことは覚えている。そのとき22時30分くらいで,最終電車に近いことも後で知った。白タクとの交渉は筆談+英語だったので,私がはじめて発したイタリア語はミスクィーズだった筈だ。

今回,ネットと経路を検索しながら書いていこうとしたところ,テルミニ駅へ直通の地下鉄は見当たらない。何せ20年以上前のことだ。何がどう変わったのかわからないけれど,とにかく空港から地下鉄でテルミニ駅へ向かい,午前0時前に着いた記憶は残っている。  

その後,平成のはじめに翻訳出版された旅行ガイドブックを入手した。当時のテルミニ駅までの行き方は次の通りだ。

まず国鉄でオスティエンセ駅に向かう。オスティエンセ駅で降り,エスカレータや動く歩道を延々と進むと,地下鉄B線のピラミデ駅に着く。このようにしてテルミニ駅に着いたようだ。たぶん,上りと下りを確認したのはピラミデ駅でのことだと思う。時間からするとほぼ最終電車の時間で,これを乗り過ごすと,あたりに泊まることも何もできないという。綱渡りだったわけだ。決して,自慢しているわけではない。

 

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