CD

昭和60年代にCDで音楽を聞くようになった。それは20代を折り返す前あたり,新しい音楽というかロックにあまり惹きつけられなくなった時期と重なる。いきおいCDで手に入れるアルバムは再発,ベスト盤が多かった。

リアルタイムでキンクスの曲が好きになったのは“State of Confusion”からで,アルバムは国内版をLPで手に入れ,何年もの間,引っ張り出しては聞いていた。その後の何枚か買ったのだけれど,“State of Comfusion”のような性急さが失せ,ノスタルジックな味わいが強調されるにつれ,あまりターンテーブルに乗らなくなっていった。
CDでキンクスの旧譜がリリースされるようになり,60年代から70年代はじめのアルバムを探しては聞いていた時期がある。元々意外にノスタルジックなんだ,というのが当時の正直な印象だ。“Something Else”から“Arthur”あたりまでを聞いて,マッドネスの“The Rise and Fall”に共通する感じを受けたものの,当時はマッドネスを聞いていたほうが面白かった。すでに“The”が付いていたマッドネスだったか,その後のバンド活動がなくなっていたさびしい時期だったかもしれないけれど,それでも,だ。
一連の“Come Dancing”っぽい曲はクラウデッド・ハウスがリアルタイムで新曲をつくっていたし,キンクスのフォロアーの曲のほうが面白かったような気がする。

でも,CDが登場して数年の,新旧さまざまな曲を聞いていたあの時期をときどき思い出す。会社帰りに数寄屋橋のハンターや六本木のWAVE,週末はもちろんディスクユニオンに出かけていた時期が過ぎ,新宿にヴァージン・メガストアができた頃の倦怠感ひたひただった筈なのに,それでも日々,新しい何かを探していて,しかし決して二度と戻りたくない,いやまったく面倒な「あの頃」だ。

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