母親が入院していた頃,会社帰りに見舞いにいくのに,駒込や町屋で一度,電車や都電を降りて,古本屋をのぞいてから出かけたことが少なくない。そうでもしないと,どんな顔をして見舞いにいけばよいのかわからず途方に暮れていたと言うのは,あながち当時の気持ちから遠くない。
数年前でしかないのに,駒込には古本屋が多かった。当時開いていた店のうち,品ぞろえのよかった2軒はすでにない。町屋のタイ料理屋の向かいにあった店も数か月前に寄ろうと思ったら薬局になっていた。
ときどき,大阪や神戸に出張に出かけると,チェーン店ではない古本屋がいまだあちこちで店を開いている。東京近郊はここ15年ですっかりさびしくなってしまった。