下町探偵局


半村良の『下町探偵局 PART 1』(角川文庫版)を読み直していた。

もともと昭和50年代に,日曜日の夜,放送されていた「日曜名作座」(NHKラジオ)で森繁久弥と加藤道子の語りを聴いたのがはじまりだ。当時はまだ,半村良の小説を読んでいなかった。

「日曜名作座」を聴こうと思ったのは,なにかの拍子で江戸川乱歩の『黒蜥蜴』や『黄金仮面』が放送されることを知ったからだった。それ以来,取り上げる作品によっては続けて聴いた。

『下町探偵局』は数年後,まず潮文庫(全2巻)で刊行され,不思議なことにあまり間をおかず数か月後,今度は角川文庫からも,まったく同じ内容で2冊に分けて出た。当時,持っていたのはだから先に出た潮文庫版だ。解説は田中小実昌と都筑道夫,表紙は滝田ゆうが描いていた。

この小説はサブタイトルに“センチメンタル・オプ”を示されていたこともあり,「下町人情物」のくくりで語られがちだ。ところが今回,読み返してみたところ,半村良が描くのだからそのシニカルさは強烈で,どこが人情物なのだろう? という按配。『妖星伝』を書いた半村良だ。それを人情物でくくるのは初手からおかしいだろう。

もう一点,探偵事務所を舞台にしたにもかかわらず,小説の仕立ては後の「日常の謎」系ミステリに通じるものがある。当時,戸板康二が描いていたシリーズを,その出自とするならば,半村良は推理小説の舞台で,「日常の謎」系を描いてみせたといえるかもしれない。さらに,「日常の謎」系の出自を戸板康二ではなく,捕物帳に遡ってよいのかもしれないと思いもした。

人情物ということで,石森章太郎のマンガとつなげて考えてみた。『鉄面探偵ゲン』の後半と『下町探偵局』はどこか共通するように感じがしたし,『Knight andN day』『四次元半襖の下張り』あたりの「プレイコミック」連載作品と半村良作品とのつながりも。村雨良と半村良。30年以上,くらべてみたことがなかったこと自体おかしかったのだ。

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