「原作は『カムイ伝』みたいになってきたんだぜ」
部活の帰りだったろうか。聡史がそう言ったとき,つまり主人公が登場せずに物語が進んでいく,ゆるいグラフィティを意味することだいうことくらいは判った。『風の谷のナウシカ』の3巻以降を当時,喩えられる漫画は『カムイ伝』くらいしか思いつかなかった。
結局,『風の谷のナウシカ』が完結したのは,それから10年近く経てからのことだったけれども,7巻まで読み終えて,聡史が言おうとしたことが,あながち間違いではなく,だから,そのことが彼の言葉とともにひっかかっていた。
風の谷って,盟約か何かのために,戦になると兵を出さなければならないのだったよな――そんな定かでない記憶が蘇ってきたのは最近のことだ。1巻,2巻は,1ページに盛り込まれた情報量がとにかく多いので,しばしば再読しても,だいたいこのあたりで頓挫した。
先日,エコロジーとか反原発とか抜きにして読み返してみようと,とにかく思い立ち,ページを捲り始めた。(続きます)