出口裕弘

出口裕弘の訃報。

はじめて読んだのは『天使扼殺者』で,『京子変幻』『越境者の祭り』と3部作のような作品を手にした。1980年代に入って早々のことだったと思う。

ヴァンプに翻弄される男を通して,結局,ヴァンプが魅力的に映る小説というのは,たぶん10代に読むより,今,読んだほうがより魅力的なのかもしれない。

ユイスマンスは『出発』を読んだものの(『さかしま』『彼方』はもちろん),『大伽藍』までは読んでいなかった。

読後感はあまりよくないのだけど,なぜか引っかかるところがあって,書棚に数冊差し込んだままだ。

訃報を聞くと,読み返してみたくなるのだけれど,鶴見俊輔を読むだけで,かなりの量になる。ユイスマンスを読むのはかなり重い。

この先,若い小説家を中心に読んでいくことはないと思うので,結局,読み返すだけで時間がつぶれていくことは目に見えている。そんな具合でよいのかもしれないと,昨日,今日,思った。

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