亡国記

高田馬場で手に入れた『亡国記』(北野慶,現代書館)を読み終えた。巨大地震により島岡原発が大破。首都機能は北海道に移転。前半は『日本沈没』第2部のインサイドストーリーのような感じといえるかもしれない。著者のは小説家ではないようで,盛り込まれた情報量に比べて,全体は映像作品のノベライズっぽい。

次へ次へとページを捲らせてしまうテーマのシリアスさは確かにすごい。ただ映像作品として企画した方がよかったのではないかと,やはり思うのは,全体,マンガや映画で展開する切り方なのだ。登場人物の造形といい,妙に類型的に貼り付けられている感じがする。『日本沈没』や『あ・じゃ・ぱん』は,だからこの作品に比べると,間違いなく小説だと今更ながら感じた。たとえ『あ・じゃ・ぱん』が当初,大友克洋との共作を意図して構想されたとしても,ひとたび小説として描かれると,それが小説になってしまうのとは違う。

とはいえ,本書を読みながら,危機のなかでのさまざまなシミュレーションに多くの刺激を受けた。

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