宇都宮


ユニオン通りからオリオン通りへと下った。ユニオン通りの角には落合書店があったけれど,草臥れた感じに見えた。通りの両脇には社会人になれば,それなりに時間を費やすことができそうな洒落たバァとブティックが抜けた歯のようにぽつりぽつりと店を開けていた。宇都宮で社会人になるということは8割がた公務員ということだ。この歳になると,ありえたかもしれない宇都宮で社会人として過ごす自分を想像して少し怯えた。

ホテルにチェックインしてから,街なかに出ようと思った。オリオン通りと東武百貨店を横目に大通りのほうへ折れた。左角には上野文具店が店を構えていた。洒落たつくりになっていたけれど,古びた感じがした。

ホテルは昔からあったような記憶がある。まったく縁がなかっただけだ。バスを降りて以降,30年前にあったにもかかわらず,まったく関係をもつことがなかった店がそれなりにあることに気づいた。

夜9時になった。日中の雨が戻ってきたのか,ぽつりぽつりと肩にあたる。オリオン通りに入ると,空気が沈んだ。

この時間に街中を歩くのは酔っ払いがほとんどだった。カクテルやらギョウザ,ジャズなどで地域起こしを始めてから久しいというけれど,ただしまりがなくなった感じだけが漂ってくるのは気のせいだろうか。オリオン通りを一本奥へ入ると飲み屋街だったことを思い出す。県庁の裏側も全体,そんな具合だ。

高校時代に入ったような気がする小体な中華料理店でギョウザとビール,油淋鶏で夕飯を済ました。カウンターとテーブルが3つ,テレビのスポーツ番組をBGMに客は二人だけだった。

すっかり他の店に入る気分がしなくなった。ホテルに戻り,半村良の短編集を読んだ。

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