山川方夫

今月の読書会,山川方夫の「夏の葬列」が課題だったので,刊行されたばかりの創元推理文庫で読む。ショートショートなので,この作品自体はすぐに読み終えた。続けてほかの作品にも目を通す。

1965年に事故で亡くなったというのだから,私が生まれてそれは本当にすぐの時期で,小説全体,すこし軋んでいる感じがした。ショートショートの文体は結城昌治に少し似ていたけれど,その文体で固定しているわけではなく,純文学雑誌に掲載された作品の文体とやけに違う。使い分けられるといえば聞こえがいいが,ショートショートに振り回され,文体が固まらないうちに亡くなってしまったのかもしれない。

「夏の葬列」は国語の教科書に掲載されてもいるそうで,この小説を読ませて,どのように教えるのか想像すると,心配になる。ショートショートのつくりとしては,たとえば江戸川乱歩の「防空壕」を思い出した。でも,「防空壕」は少なくとも教科書に載るような作品ではないしな。などと考えながら読書会に参加した。

被害者/加害者の二項対立ではなく,罪の意識を抱えながらいかに生きるかという意見を聞き,なるほどと思った。しかし,この事件を罪と片づけてしまってよいものかは悩む。どうすればよかったのか考えたりすると,まるで,2人しか乗れないボートを使って救助に出かけた男性。妻と子どもがおぼれている。どちらを助けるか,のような,まったくどうでもいい思考実験と五十歩百歩の答えしか出ないだろう。(あとで加筆予定)

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