ホテルニューハンプシャー


その日,自転車で駅まで本を買いに行ったのだと思う。探していた本がなかったからかどうか記憶にない。そのまま切符を買い,地下鉄日比谷線と相互乗り入れしているその私鉄に乗った。着いたのは渋谷だったのだから,どこかで乗り換えたのだろうけれど,もちろん覚えていない。

シネマライズ渋谷がオープンしてからあまり時間は経っていなかった。「ホテルニューハンプシャー」を観ようと思ったのだ。

「告発の行方」が公開されるまで,ジョディ・フォスターは不思議な魅力的を携えていた。智恵をもった動物のような感じがしたものだ。しかし,それは決して人間ではない。

「白い家の少女」「ダウンタウン物語」「タクシードライバー」の頃からそうした感じを受けたはしたが,「フォクシーレディ」までは,実のところそれほど危険な香りを感じなかった。

ところが「スヴェンガリ」あたりで妙な違和感を覚えるようになった途端,「シエスタ」「君といた夏」まで,その奇妙な魅力は続いた。

「告発の行方」を観たとき,あの気配が失せていたことに驚いた。その後も「羊たちの沈黙」のクラリス役はすばらしかったけれど,「ホテルニューハンプシャー」の頃のジョディフォスターが抱え込んでいたこの世でないもののような佇まいはなくなってしまった。

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