堀江敏幸の『郊外へ』を読みながら夕飯を済まそうと思った。

池袋東武の11階から上がリニューアルされた。先日,家族と使ったとき,なかなか感じがよかったので,ぐるりとまわり店を探してみた。一人で入るにはコストパフォーマンスがよくない。結局,地下まで戻り,このところときどき入るようになった池袋ホープセンターのとんかつ大吉にした。

19時過ぎだから,店内は混んでいる。柱を囲むように据えられたカウンター席へと案内される。ジャケットを脱ぎ,鞄から本を取り出した。

右隣の男は,串揚げを肴にホッピーを飲む60歳近く。左隣は私と同年代のサラリーマン風で,ブックカバーをかけた本を読んでいる。喫茶店でさえ,他人が本を読む姿を目にすることは少ない。めずらしいなと思いながら,向かいのサラリーマンに目を移すと,こ奴も本を読んでいた。本を読む男2人と同席となると,不自然さを感じてしまうくらい,それはいまやほとんど目にしない光景だ。

ところが,その奥のテーブル席に座る男も本を読んでいた。こ奴ら,とんかつを待ちながら,スマホをチェックすることなく本読んでいるのか。ここに至って『郊外へ』を読みながら夕飯を済ますためにとんかつ屋に入ったのがまちがいではなかったことに気づく。

次に入ってきた客も書店で買ったばかりなのだろうか,カバーがかかった本を抱えている。

本ととんかつの相性が良いという話はもちろん聞いたことがない。

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