知識

読書会の課題図書が野崎まど『know』(ハヤカワ文庫)なので,購入して読み終えた。

手馴れた文体とワイズクラックが散りばめられていて,かなり読みやすい。ただ,物語の骨格にあるウソのつきかたが,矢作俊彦流に言うと「学生がノートの端に書いた落書き」程度で,長編1本をもたせるにはかなり弱い。

武谷三男は,技術と技能を切り分けて,それぞれの側面をもつ技術論を展開した。当時の速記録を読むと,自動車の運転を例にあげて解説している。自動車の仕組みや運転規則,運転方法は技術化されているから教えることが可能であるが,一人ひとりがたとえそれらを教えられたとしても,すぐに自動車を運転はできない。ましてや路上に出て,運転するには,コツとカンを含めた技術/技能を身体化しなければならない。

技術には,すでに明らかになっているもの/ことだけではなく,原理自体は明らかになっていないものの再現可能な法則性をもつものも含む。後者はまだ「答え」として一般化されていないもの/ことだ。

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