神戸

神戸の旧居留地から乙仲通りに初めて足を踏み入れた。こんな景色が残っていたのだという驚きと(後で震災後の復旧について知ったものの),港,中華街,元高,北野まで,歩ける範囲に雑多な景色が包括されているのが面白い。

仕事で訪れるときは,ポートアイランドとビジネスホテルの間,大学や病院と駅の間を行き来するばかりで,せいぜい三宮の地下街から元町までを土産探しに通るくらいだった。繰り返すけれど20数年にわたって神戸を訪れて,知らない景色はまだまだある。

柄にもなく2泊3日の家族旅行について留めておくことにする。

14時を少し回った頃,新神戸駅に着いた。風は冷たく,気温もあがっていない。もう一枚上着を纏っても汗ばむことはない気候だった。そのままタクシーでオリエンタルホテルまで行く。荷物を預けてから観光に出かけようと思ったのだ。オリエンタルホテルのフロントは17階で,尋ねる前に,この時間からチェックインできると紹介を受けたため,サインをして部屋に入った。海側ではなかったものの,調度品も広さも十分すぎるものだった。数年前,各地のホテルにリーズナブルに宿泊できる予約サイトを使ったことがある。安いだけが取り得の非道い旅館に泊まることになり,それ以来,安価の旅館を使うことがトラウマになってしまった。

昼食をとるために外に出た。家内と娘は,ガイドブックに掲載されていた天井高の元銀行後にできたカフェかアフタヌーンティーがとれる店のどちらかへ行きたいという。後者が道路を挟んだ斜め前にあったので,まずそちらを覗いた。tooth tooth maison 15thという長ったらしい店で,佇まいがいい感じだ。ランチタイムギリギリだったため,かえって混んでいなかった。

日光東照宮の先にある明治の館もこんな感じだったけれど,こちらのほうが遥かに地に足が着いている。20年くらい前,出張の帰りに家内と待ち合わせて少しだけ神戸あたりをぶらついたことがある。そのとき,この店の本店で昼食をとったことを思い出す。

旧居留地から乙仲通りまで歩く。つまりは横浜の山下町から元町あたりの街並みがこんな感じになる可能性があったにもかかわらず,ほとんど魅力のない街になってしまったことのアリバイみたいな町の景色だ。乙仲通りは,吉祥寺の東急あたりと麻布十番を合わせて3で割り,高さを抑えたといってしまうと身も蓋もないけれど,全体そんな様子だった。

店を一軒一軒覗こうとする家内と娘とは2時間後に落ち合うことにして,私は元高をめざした。と,いっても中華街を越えて左のほうにしばらく歩けば一番地の入り口が見えてくる。

いつものとおり,マルダイ書店,サンコウ書店,古本ツインズを巡る。堀江敏幸のハードカバー2冊が安価で出ていたので購入しようか迷った。パトリシア・ハイスミスの『キャロル』が読みかけのままバッグに入っている。結局,このあたりでは購入せず,通りを挟んだレトロ倶楽部で雑誌のバックナンバーと久保田二郎の文庫本を購入して乙仲通りに戻る。

家内と娘は,いろいろと物色したようだ。近くのビル3階にあるひとところカフェに入る。ほとんど中央線沿線,吉祥寺か国立あたりのカフェという感じのお店。私はワインを飲んだ。一人でオーダーと調理をこなしている店員(店主?)は,国立あたりの大学生っぽい佇まい。しばらくしてもう一人店員の女性が戻ってきたものの,喧嘩でもしたのだろうか口を利かない。

その後,他の店を少し見て,夕飯にすることにした。何も決めていなかったので,娘が見つけたkitchen Ravoに入った。家内はお腹が空いていないというので,アラカルトで数品をとりシェアする。ところが,出てくる皿がすべて旨い。野菜の甘み,新鮮でおいしい魚,海のりのリゾットは玄米を炊き込んだもので,これまで食べたことのない風味と感触。すっかり満足してホテルに戻った。一日目終了。

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