編集

埋もれてしまって見つからない号が数冊,新古書店の棚に並んでいたので,「ミステリ・マガジン」のバックナンバーを購入した。1973年から1978年あたりのもの10冊ほどだ。

矢作俊彦の「真夜半へもう一歩」連載分は30年以上前,神保町で1冊300円くらいで揃えた。当時,10年くらい前の雑誌が1冊300円というのは,それでも安いほうだった。購入したのは古書センター並びの古書店のはず。ここは「ミステリ・マガジン」のバックナンバーが豊富で安かった。今は品揃えがまったく変わってしまったので,別の店になったのかもしれない。いまやそのときに買った値段より安いのだから買いなおしてもしかたない。

マンガ版「長いお別れ」連載掲載号をすべて揃えると17,8冊になるため,当時は第1回から数号と終わりのあたりを買うに留めた。今回,その間が何号分がつながったので,あのマンガの全容がおおよそわかってきた。ポール・ニューマン扮するハーパーとマーロウの会話はほぼ吹出しで進み,描かれるのは「カサブランカ」などという,マンガでの表現としてはかなり面白い試みがあった。そんなことはすっかり忘れていた。

この時期の「ミステリ・マガジン」は企画としては本当に面白いものばかりだ。一方で,校正,校閲については,かなりルーズな感じがする。というか,誤植や誤用がしばしば目に付く。

編集の仕事は,企画を立て,著者と打ち合わせ,原稿入手して,原稿整理。印刷所に入稿(この前に基本フォーマットデザインの打ち合わせ/決定があるが),初校を校正して著者校正に流し,著者校正の赤字を反映して,再校へ。この間,校閲チェックがあったりして,目を変えて同じ原稿を何度も見る。「読むな」とよく言われたものだ。

用字用語に則って,原稿に赤を入れるにしても,パソコンで原稿整理をするようになる前は,編集者によって緻密さには大きな差があった。普段使う言葉も用字用語にしてしまえば,癖になるので,そうやって身につけるのが一番なのだけれど,それでも専門用語などは用語集を片手にチェックしたものだった。

早川書房の編集部は,企画についてはとても秀でた力をもっていることは伝わってくる。しかし,校正,校閲については企画ほどの力が感じられない。このアンバランスさが今も早川書房についてまわっているのではないかと思いながら雑誌のページを捲った。

もちろん,反対に企画力がなくて,校正・校閲に力を発揮するのならば,出版社として店をはらずに,編集プロダクションで食べていけばよいのだから,アンバランスさのバランスはとれているのだ。

ようやく矢作俊彦の「真夜半へもう一歩」について連載をもとに記すことができるようになった。その前に「王様の気分」を読み返しはじめたところだ。

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