みちくさ市

好天のなか,先週末にみちくさ市があり,年数回の一箱古本屋店主になった。

本を発送する前日まで,何を並べようか考えがまとまらない。ただ,これまでに比べて文庫本を多めに,また新書を並べてみることにした。おかげで箱はいつもより軽い。

当日,鬼子母神境内で,はるのパンまつりがあると聞いていた。人の流れを期待する一方で,携えた本,雑誌に女性向けの本がほとんどないことは明らかだ。そう思って講談社現代新書を数冊引っ張り出したり,迷走が続くなか当日を迎えた。

受付を済ませると,はにかみさんが荷物を移動してくださった。11時前にセッティングを終えて,Kindle fireを用意。BGM用にアマゾンプライムからダウンロードしておいた「ピローズ&プレイヤーズ VOL.1 & 2」を小さく鳴らす。ところが,店は都電の踏切から近いため,音はほとんど聞こえない。どこかスイッチが入らない感じのまま,前回もお隣だった塩山さんに挨拶したあたりで開店。

最初に売れたのは「東京日和」。そこからが続かない。12時を過ぎてもまったく動かないため,並べ方を変えたり,BGMを原田郁子に変えたり,あたふた。まさに“Drifter”。というか夢野久作の小説に登場する,主人公にもかかわらず傀儡子に操られているような感覚だ。

パンまつりに足を運んできた家内がいつもより早く助っ人に来たので,気分転換を兼ねて早目に昼食に行く。久しぶりに目白のkazamidoriに入った。

午後になると少しずつ動きはじめた。ただ,午前中から暑いこともあり,全体ぼーとしていて,途中,多摩やさんが寄ってくださって,ツイッターの話など振ってくれたにもかかわらず,すっかり妙な話をしてしまう。おもしろ本棚の皆さん,昨年お隣だったまいにちさん,駄々猫さんなどもいらしてくださり挨拶はするものの,開店後の店主からはほど遠いテンション。だめだったな。

塩山さんに何冊か抜いていただいたあたりから動きが出て,15時以降にパタパタと続く。全体,私が店番しているときより家内のほうが売れたのは明らかだ。

結果は芳しいものではなかったものの,文庫本,新書を中心にもってきたため,帰りの自転車は気持ちほど重さを感じなかったのが救い。

「本ってね、何に対して値段がついてるかというと、物体としての本、つまり紙と印刷インクに対して値段がついてるんですよ。もし活字による表現に値段がついてるんだとしたら、みんなが買いたがる本は高くて、誰も欲しくないような本は安くなきゃいけない。」
矢作俊彦(安彦良和との対談より)

たぶん古本屋は,書き手を飛び越えたところで,ここをバイパスするはずなのだけれど,結局,紙の重さが売り上げに比例することを痛感した。次回はその天秤から降りたところで店を張れればと思う。

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