「アンテナ」のアルバム順に演奏は始まった。
“Morning Paper ”は2曲目だから,vol.2のときのように全体引っ張り気味の演奏とは異なり,緩急をつけ,曲の輪郭がくっきりしている。
“ロックンロール”は,ダッダッダッダッと4つ打ちのバスドラに尽きる。ドラムに合わせてテンポを上げた演奏で,その早急さが曲に躍動感のようなものを漲らせる。
“黒い扉”でこの日の一度目のピークに至る。つまりは岸田繁のギタリストとしての力,それは決して狭義のテクニカルさとは違う自由で卓越した表現力,即応性のようなものを見せつけられた。サポートギタリストはがんばっているものの,どこか“なぞる”ような演奏で,それは経験の深さによるものなのかなと思いながらステージを見ていた。
“バンドワゴン”の至福感は,“リバー”にも似て,私には苦手のはずなのだけれど,ライブで鳴らされると,衒いもなにも失せてしまう。
“How To Go”は圧巻だった。すごいものみちゃったなあというのが正直な感想。そのすごさを,少しずつ言葉にしてみたくなる。終わってからの鳴り止まない拍手のなか,結局,私自身,拍手を止めることができなかったことについても。