情報参謀


今日は午前中から事務所に出かけて仕事。夕方までかかって,下版前の単行本のゲラをチェックする。著者数名に確認箇所をメールすると,早速返事がある。家内と娘は新国立美術館に行っているので,夕飯はひとりでとることにした。

高田馬場のパブで,小口日出彦『情報参謀』(講談社現代新書)を読んでしまおうと思う。ただ,店員の対応が非道く,私の後に入ってきた6,7名の団体の騒音にいたたまれず,30分くらいで店を出た。居抜きで系列店に変わっただけなのだけれど,それまでの店の様子とはえらい違い。それでも3,4回は入ったものの,どこか他に居心地よい店を探さなければ。

新井薬師前まで行き,文林堂書店を見る。白土三平の『サバンナ』があった。あの気色悪さは,私がこれまで読んだマンガのなかで1,2を争うものだ。「シン・ゴジラ」との関連で,邪悪な眼差し,つまり油断した瞬間にこちらがやられてしまう緊張感というかサスペンス,それとはまったく別の眼差しを見て,この前,数十年振りに思い出したのだ。もちろん買わなかった。

夕飯は新井薬師に向かう最初の交差点の少し先に,それこそ四半世紀前からある中華料理店でとった。ただ,こちらも居抜きで別の店になったようで,印象は当時とまったく違った。ウーロンハイを餃子,ザーサイで飲む。定食で〆たらおなかがきつくなってしまった。

駅前で夕飯をとる店を少し探したときのこと。2016年に自分が新井薬師前にいる,平成のはじめ頃,同じようにこのあたりをぶらついていた私はまったく想像もしていなかったそのことについて考えた。仕事に就いて数年後,この町に住むきっかけは弟がミラノに行ってしまったことで,空いたアパートに転がり込んだのだ。新井薬師に思い入れも何もない。にもかかわらず,この四半世紀で変わった景色と変わらないそれとを無意識に比べながら歩いている自分が妙にくすぐったかった。町が自分に負ぶさってくるような感じとでも言えばいいのだろうか。その町が新井薬師なんだから,自分の意図も何もあったものではない。

『情報参謀』は,中華料理屋でウーロンハイを飲みながら読み終えた。とても興味深いのだけれど,まったく私が嫌いな世界だ。昔,ゴルゴ13でもルパン三世でも,こうしたスキーマをかいくぐる快感を物語のなかで展開していた。圧倒的に絡み取られるだけの世の中なんてつまらないなあと思いながらページを閉じた。どこまで行っても「意味」を問われる,フロイト流精神分析のようなもので,あの重さと執拗さといったら,それはそれは。

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