台風

「台風直撃で,都民の足が乱れる」。山田風太郎よろしく,何十万人が同じタイミングで躓くかのようなイメージの一日。

事務所では,単行本の責了前のゲラ戻しを終え,先日の検討会のテープを聞きながら原稿に起こしていた。窓越しに突風で空き缶がカラカラと飛ばされる音が聞こえる。「空き缶」という言葉にまつわる記憶と感触が久しぶりに蘇るような気がした。

夜のツイートで絲山秋子『薄情』が谷崎潤一郎賞を受賞したことを知る。年初からの読み直しは『末裔』まで辿り着いているので,『薄情』までもう少しだ。くりかえし評価されるのだけれど,本当に文章がうまい。『末裔』は,村上春樹が妙な年のとりかたをしなければ,もしかしてこういう小説を中心に書き続けていたのではないかという印象。

台風というと,結局,2005年のハリケーン・カトリーナ上陸のとき,ニューヨークの安宿で見たニュースの一場面が蘇る。それでなくても8月の末には,まとわりつくような暑さをここ10年,思い出してしまうというのに。

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