水族館のイルカショーと被らないようにステージの時間を調整しているため,セットチェンジの時間が20~30分くらいはある。その時間でリユースの食器類を戻しに行って,ビールを買ってきた。
矢野顕子はピアノ一台,「春咲小紅」からスタートした。2曲めは「ばらの花」。伊勢丹の歌のあとは「ひとつだけ」だった。忌野清志郎が「黒い扉」と変えて歌った歌詞は,矢野顕子ソロでは,オリジナル通り「白い扉」だった。最後は岸田繁のギター,歌を交えて一曲披露。何度も聴いているのに,矢野顕子のライブを見たのは初めてだったことに,今更気づいた。
矢野顕子のライブの後半からスタンディングエリアに人が増えてくる。私は反対にシートエリアに戻り,家内と娘とともにMr.Childrenのステージを見た。人気があることはわかった。知っている曲も知らない曲もあり,ボーカリストの見栄えするステージアクション。ギタリストは何だか象さんのポットの片割れにやけに似ている。アコーディオンはチャラン・ポ・ランタンの片方のようだ。サックスとキーボードが目立つような気がした。
雨は降りやまない。ただ,雲の流れが速いので南の空に見える明るい箇所がはやく来てくれることを願いながら,家内,娘と一緒にスタンディングエリアに移動した。ところが何だか雨が激しくなってくる。この感じはWorld Happiness 2014っぽいな。と思っていると,岸田,佐藤がステージに入ってくる。ゲストボーカルに桜井を迎え,「シーラカンス」が始まった。雨音が激しくなる。すばらしい演奏だった。
激しい雨は止まない。時折,稲光と雷鳴がする。World Happinessのときは雷鳴はあまりしなかった。セットチェンジを終えたものの演奏が始まる兆しはない。そこに進行の人と岸田,佐藤が登場し,中止の判断をせざるを得なかった旨,アナウンスがあった。
この状況で,中止を決められるのはすごいな,とすぐに感じた。そんなふうに家内,娘に言っていると,まわりからステージに向けて拍手が起こった。そうだな。これは拍手に値する決断なのだ。
World Happiness 2014は,大事に至らなかったから,ある意味“伝説”をつくったのだけれど,あの状況で開催し,継続した判断自体はどうだったのだろうかと,ときどき思うことがある。結果オーライで済むことと,済まないことがある。たぶん,音博に参加した人もどこか共通した感じを持っていたのだろう。あの拍手は,ステージを終えたミュージシャンに向ける拍手と何ら変わらない清々しさに満ちていた。