マチネの終わりに

Instagramの投稿を見て,平野啓一郎『マチネの終わりに』(毎日新聞社)を手に入れた。この人が薦めているのだから読んでみようかという塩梅だ。

しばらく前に買い,数ページ読んだまま,他の本を鞄に入れてしまった。結局,本式に読み始めたのは少し前のことだ。出だしと最後が面白く,中盤は説明的な感じがした。特に後半2章は,さまざまなモチーフが盛り込まれて展開する物語に,読みながら自分の記憶がスキャンされるような感じがして面白かった。とりあえずメモ。

人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?
→ボリス・シリュルニク

マルタとマリアっていう姉妹の話、ありますよね?ーーイエスが家に来た時、姉のマルタは、彼をもてなすために一生懸命働いているのに、妹のマリアはただ、側に座って話を聞いているだけ。
→竹内敏晴、エックハルト

自由意志というのは、未来に対してはなくてはならない希望だ。自分には、何かが出来るはずだと、人間は信じる必要がある。…しかし…だからこそ、過去に対しては悔恨となる。何か出来たはずではなかったか、と。運命論の方が、慰めになることもある。
→倉多江美

「人間は結局、もう一度、運命劇の時代に戻っているのではないかと近頃よく思う…」
「…グローバル化されたこの世界の巨大なシステムは、人間の不確実性を出来るだけ縮減して、予測的に織り込みながら、ただ、遅滞なく機能し続けることだけを目的にしている。紛争でさえ、当然起きることとして前提としながら。善行にせよ、悪行にせよ、人間一人の影響力が、社会全体の中で、一体何になるって。」

「…すべてはコミュニケーションそのものが自己目的化されたシステムの中で起きる、予測可能な些細なトラブルに過ぎなくて、そこで人が傷つこうと、誰かと誰かとの関係が絶たれてしまおうと、システムそのものの存続にまでは影響を及ぼさない。」
→東浩紀

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