奇病連盟

仕事帰りにブックオフで購入した北杜夫の『奇病連盟』(新潮文庫)をその後,読み始めたところ,懐かしさと面白さで,あっという間に読み終えてしまった。ストーリーは読み返してようやく思い出したくらいで,記憶にほとんど残っていなかった。ただ,最初に読んでから40年を経て(購入したものは私がはじめて手に入れた版とたぶん同じものだった),自分の性格形成というか,社会の見方に関して,この小説にかなり影響を受けていたのだと感じたのが新鮮だった。

大学を卒業してから現在まで,少なからずこの小説のことが常に私の識閾下にあったのではないだろうか。『奇病連盟』だけれど。

50歳に近づいた頃からずっと,北杜夫の小説やエッセイを読み返している。というか北杜夫の訃報に接してからといった方が正確だろう。昔に比べると『月と10セント』や『高みの見物』,そして本書のような作品から受けた影響の大きさを実感する。影響の一部分が北山修に続いていたり(すで途切れたけれど),矢作俊彦に続いたりしているのだ。

矢作俊彦が描くエッセイと北杜夫のそれとはどこかで共通しているように思う。矢作流というかエリック・ドルフィーにたとえていうならば,それは故郷喪失者,エクスパトリエートのつぶやきに近いものかもしれない。

奇病連盟初版
昭和42年発行初版
奇病連盟新装版
昭和46年発行新装版

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