CD

MADNESSのライブの余韻がおさまらない。11年前も同じような数日を過ごした気がする。その頃,Web上でライブの感想を検索するのは「はてな」中心だったことを思い出した。

矢作俊彦の対談が掲載されているというので,会社帰りに「キネマ旬報」を買った。遅くなった夕飯を済ませ,CDラックをチェックすると,MADNESSのアルバムはほとんど揃っていた。“THE MADNESS”はなかったけれど,ボックスセットまで,いまだ手元に残っていた。

KING CRIMSONのアルバムは“STARLESS AND BIBLE BLACK”とあと数枚残っているだけだ。あるとき,パソコンに落として,売り払ってしまった。MADNESSのCDに比べると高価で取引されるのが大きな理由だ。それでも,残っていたことに妙な感動を覚えた。

那智君と初めて会ったのは会社合同の野球部の納会だった。20年以上前のことになる。MADNESSの話,それもたぶんボックス盤“the business”の話をした気がする。10年前,紹介を受けて仕事を依頼するために会社に来てもらったとき,その話になった。当時でもそれくらい,めずらしい話題だったのだ。

初めて組んだバンドで,コピーする曲を持ち寄ったとき,私は“Our House”を選んだ。カバーできるわけないのだけれど,できる程度にアレンジしてでも音を鳴らしてみたかった。

CDの“The Rise and Fall”をかけながらキネ旬に掲載された矢作俊彦の対談を捲っていると,その頃,“The Rise and Fall”(もちろんLPで)あたりをかけながら,矢作俊彦の短編を読んでいた時間を思い出した。何の話をしていたときだったろう。昌己に「ル・カレじゃないのかよ」と突っ込まれたことがある。いや,違う。「MADNESSを聴きながらル・カレを読むんだ」と言ったら,「イギリスかぶれだな」と嗤われたのだ。

それからGeorge Marshallの“TOTAL MADNESS”とデイヴ・トンプソンの『2トーン・ストーリー』を引っ張り出し,ただページを捲った。

繰り返しになるが,人生をやり直したいなどとは絶対に思わない。にもかかわらず,あの時間を今,そのままここに据え置きたい,その誘惑には駆られる。まあ,それは子どもの頃,月に一度の土曜の午後のようなものだ。床屋で過ぎる1時間を望むのに等しく,叶わないものなのだけれど。

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