赤い公園

オープニングは「カメレオン」。ステージ下手に3人のホーン隊を従えて,スネア連打から始まった。新譜を聴いたときに感じたリズム隊の無敵感に拍車がかかる。ポール・トンプソンのドタバタしたフレーズをスティーブ・ジャンセンが叩いたかのようなドラムに凄まじいベースラインが絡む。これまでフリーキーなようでアレンジの枠からはみ出なかった赤い公園が,この曲の後半では巧みな暴れ方で盛り上がった。

「AUN」はこの曲をポップミュージックの範疇に収めてしまった勢いそのままに,同期との絡みも美しい。

轟音からスパニッシュに展開する「急げ」。ここから「サイダー」までは,曲ごとにカメレオンよろしくバンドの姿を擬態させて畳みかけた。「塊」「西東京」「のぞき穴」へと続く音圧は蛇の道はヘヴィーな感じだ。「サイダー」は“Third Uncle”よろしくリフで押し切る。

曲ごとのライティングは,このバンドにしてはかなり精緻に組み立てられ,どれだけ練習したのか知らないけれど完璧だ。

昔,テレビ番組で,美空ひばりのものまねで名を馳せたモノマネ歌手が,商店街を歩きながらアドリブで美空ひばりの曲を歌う場面があった。似ているなと思ったのもつかの間,本家のレコードを被せて,キーが驚くほどずれていることがあからさまになった。絶対音感でも持っていなければ,出だしの音をピタリ合わせて歌えはしない。佐藤が抱える困難は,難易度の高い曲ばかりのなか,出だしをずらさずに歌いはじめられるかというところにあると思う。もちろん曲さえ始まれば佐藤の独壇場だ。

「journey」「勇敢なこども」「交信」が後半のピークだった。赤い公園が「勇敢なこども」を演奏し歌う場面を見て,どうしてだろう。胸が詰まった。(続く)

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