寒い

このところ電車が少し遅れている。バタフライ効果と呼ぶのはおかしいのだろうけれど,数分の遅れで,結果,会社に着く時間が10分以上違ってくる。10分程度ではあるものの,だからといって早まることはあまりない。

とにかく,ほとんど冬の寒さだ。かさついた指先がその役割のかなりを果たさなくなってきた。

会社を出たのは20時過ぎ。駅前の居酒屋で夕飯をとり,『寒村自伝』を捲りながら帰る。忙しくなってくると,居酒屋で食べる回数が増えてくる。手持ちの仕事が年内には片づきそうにないし,12月締切の企画も動いているから,春先までこんな調子が続くかもしれない。

『寒村自伝』は,とにかく「空想少年の生い立ち」の項だけでも誰か映像化しないだろうかと思うくらいに面白い。横須賀で育ち,横浜の実親のもとに帰され,日露戦争中の大連に行くまでで,寒村はまだ17歳。日露戦争のあたりは次の章に描かれているものの,文章が巧くて読みやすい。明治の暮らしというと,どこか適当なイメージを補完しなければ想像さえできなかったのだけれど,「空想少年の生い立ち」を読むと,生活のリアリティが感じられる。ときどき,結局,変わっていないのだなと嘆息をつくことになるとはいえ。

横浜を舞台に矢作俊彦が寒村を描いたら面白いだろうな。徳川末期から現代にいたる近・現代史の再構築を行なってきた仕事のなかで,欠けている箇所をちょうど繋ぐことになると思うのだが。

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