仙台

30歳を過ぎるまで,那須から北を訪れたことはなかった。郡山,秋田,盛岡,八戸,仙台に足を踏み入れたのは東北へ出張するようになってからのことだ。出かけるのはほとんど秋から冬にかけてだったので,東北というとなおさら「寒い」イメージとしかつながらない。

東日本大震災後,季節を問わず仙台から石巻あたりに年,数回出かけるようになった。幕末からこっち,東北地方が経てきた歴史がようやくイメージできるようになったのもつい最近のこと。北杜夫の小説やエッセイを通してしか仙台を知らなかった時期に比べ,出かける前になると何だか気が重くなるのはそのせいかもしれない。

土曜日は都内で一件取材が入っていたので,夕方から仙台に入った。ジャニーズ関連のコンサートがなくとも,学会ひとつで市内の宿泊施設がほぼパンクすることは経験から知っている。とりあえず押さえたカプセルホテルで一夜を明かす。

酔っ払いのグループが夜中に帰ってきたり,鳴りやむことのないスヌーズのおかげで2時過ぎに目を覚ましてしまい,小一時間,眠るタイミングを逸してしまう。シャワーを浴びて,駅ビルでモーニングをとる。

地下鉄を使うか迷ったが,駅からタクシーで会場に向かう。広瀬川を越える少し前に古本屋の看板が見えたので,帰りに寄ろうと思う。

午前中からいくつか打ち合わせ,取材が続き,午後早めに会場を出た。行きの道順で歩いて帰ることにした。川を渡り右手の看板をたよりに古本屋をめざす。尚古堂書店が見えたものの11月末で店を畳んだという張り紙。しかたないので,そのまま駅の方角に向かう。昼食をとっていなかったので,近くにみつけたカフェに入る。1TO2 BLDGの1階にあるMUGIでランチを頼み,2階で食べる。いい感じのつくりで,マフィンも美味い。この建物のサイトがいまどき,めずらしい動画をあしらったもの。今年の9月にオープンしたようだ。仙台の風は強く,気温も低いのでしばらく休む。

くるときにブックオフの位置を確認しておいたので,駅に行く前に覗く。御厨さと美の『ルサルカは還らない』第1巻はじめ文庫を数冊購入して駅に戻る。

家に土産を買ってから,新幹線のチケットを購入。改札を入ったところにある日本酒の立ち飲みやで一杯飲んで新幹線に入る。ザンギをつまみにビールを飲みながら文庫本を読んでいたらあっという間に眠ってしまった。起きたのは大宮のすぐ近く。池袋でコーヒーを飲んで酔いをさまして帰る。

島田一男の『銀座特信局』(春陽文庫)を携えてたいので,行きの車中から何十年ぶりかで読み返した。新聞記者を主人公にした推理小説のトリックとしては致命的なあり得ないミスがある作品だけれど,島田一男の事件記者ものはワイズクラックをたのしむようなものだから,結局のところおもしろかった。

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