初っ端にトラブったにしては,演奏とライティングがぴったりとかみ合っている。ホールコンサートの醍醐味の1つはこれかもしれない。
当然,中野サンプラザは音がよい。特にドラムの音の響きは,ライブハウスでは叶わない類のものだ。これも何度か書いたけれど,いくつかのライブハウスで,ある時期から,まるでフランジャーをかけたようにドラムが鳴るようになった。新宿に会った頃のリキッドルームであぶらだこを観たとき,その数年前,クアトロで観たときのようには心が躍らなかった。原因はフランスのバンドみたいに響くドラムだった。
で,音博,その前の「線」ツアーとサポートでドラムを叩いている朝倉真司がとてもよかった。”The Pier”のツアーですばらしかった福田洋子とはまったく違うタイプのドラマーで,にもかかわらず曲にマッチする。
本編最後は「ブレーメン」。アンコールは「太陽のブルース」「虹」,最後の「ロックンロール」で総立ちになった。二階席は座っていられたものの。
岸田繁の凄いというか不思議なところは,ギターで出すノイズをコントロールするところだ。演奏する身になると,ノイズなのだから,毎回,どんな音になるかわからないところに楽しさがあるんじゃないかと思うのだけれど,岸田繁はきちんとこの曲のここにはこのノイズ,という音を出す。それはノイズじゃなくて,エイドリアン・ブリューの象やクラクションの音のようなものなのかもしれない。ただ,聞こえてくるのはギターで鳴らしたノイズだから,ノイズとしか形容のしようがない。