宇都宮

金曜日は早めに仕事を終えて,家に戻る。オリオン☆一箱古本市の準備。これまで並べた本に新しく並べる本を加え,22時過ぎにはリストアップを終えた。値札は宇都宮に着いてから手書きすることにしようと,カラの値札を数枚印刷し,はさみで切り揃えた。

土曜日は8時過ぎに家を出た。ダウンジャケットを羽織ると少し暑いくらい。高田馬場から日暮里で乗り換え,北千住まで行き朝食。10時過ぎの東武伊勢崎線(と,今は言わないのか)急行に乗る。島田一男を読んでいたら眠くなってしまい,あっという間に南栗橋。栃木で乗り換え,東武宇都宮に12時半くらいに着いた。

カートを引っ張ってオリオン通りから駅の方に向かう。田川沿いのビジネスホテルに荷物を預けて,駅前のバスターミナルまで歩く。その前に,バスの一日乗車券があれば便利だと思い,切符売り場で尋ねたところ,「ある」というので購入。1枚300円。やけにやすいなあと思ったら町場を巡回するもので,これでは行こうとしているあたりまでには使えない。しかたないので,乗車券をバッグに押し込む。

駅前のバスターミナルに「細谷車庫行き」がちょうど停まっていたので終点まで。この系統は家の近くまで行ったはずだという,無茶苦茶あいまいとした記憶だけがたよりだ。当時でも1時間に1本出るかどうかというニッチな路線だった。

車窓の向こう側は妙な感じがする。とにかく記憶のなかの宇都宮の道は,あっちとこっちを繋げ,ここは端折ってできていたのだなあと痛感する。こうやって通過すれば,昔,通った道だと少しは思い出すものの,思い出した道と覚えている(思い込んでいた)道とはまったく違う。

終点で降り,学校へと通じる道を進む。昔はなかったような中華料理店で遅めの昼食。

そのまま日光街道に向かって歩く。さすがにこのあたりの景色は記憶に残っている。小学4年生のとき,弟と連れ立って自転車で友人宅に向かった出会いがしら,左右を塀によって目隠しされた交差点で自動車事故に遭ったことがある。数メートルふっとばされて自転車は大破した。私は右太ももの打撲程度で済んだものの,飛び出す様子を目の前で見ていた近所のおばさんは,ダメだと思ったと後で聞いた。事故のせいかどうかわからないけれど,念のためとった脳波には少し異常があったように気がする。

その交差点の右側の塀は朽ちて,目隠しになっていない。これだったら事故ることはなかったんじゃないかと,40数年前のことを今更,言ってもしかたあるま。

子どもの頃に遊んだ田んぼを眺め,住んでいた家が経年劣化してそのまま残っている様子に愕然とする。大通りに出たあたりで,メッセンジャーを通して弟に写真を送ったところ,しばらくしてテレビ電話がかかってきた。

タイムスリップしたかのような宇都宮の景色を弟にiPhoneから送りながら,自分がその場に立っているのは不思議な感じがしてくる。

バスに乗って,山崎書店をめざす。はじめてその門をくぐった古本屋だ。小一時間かけて棚を眺める。島田一男と内藤礼,アンソロジーを1冊購入。ユニオン通りまで歩く。一日乗車券を使って田川まで行き,ホテルにチェックインする。

とりあえず,もってきた本を,値札がついているものとついていないものに分ける。値札を書きながら,本の状態をチェック。古本屋の値札や値段がついたままのものは,もってきたシール剥がしと消しゴムできれいにする。

18時くらいに一度区切りをつけて,東口のあたりをぶらつく。ほとんど記憶にない景色ばかりで,駅ビルに寄った後,ホテルに戻る。隣のアジアン居酒屋で夕飯をとる。去年も入った店。〆に野菜焼きそばの並を頼んだところ,誤って特大がきてしまう。気づかずに食べはじめたところで,お店の人からオーダーミスだったと。残ったものは持ち帰りにしてもらう。

ホテルで0時過ぎまで準備の続きをした。

土曜日は別のところに記したとおり。オリオン☆一箱古本市を終え,疲れてしまったので,帰りの東武線の切符をRAINBOWBOOKSさんに売って,私はJR宇都宮駅まで歩く。駅前の餃子居酒屋に入り,ビールを飲み一息。電車に乗ってすぐに眠ってしまった。赤羽で乗り換える前にコーヒーを飲み,池袋,高田馬場で乗り換え,家に着いたのは20時くらい。

二度と「あの日に帰りたい」などと思うことはない。ただ,歩いたはずの道,自転車で走ったはずの道の記憶があいまいに失せていて,適当に編集された記憶のままであるのは居心地が悪い。まったくそれだけの理由なのだけれど,来年も宇都宮にくる予定を入れようと思う。で,歩くのだ。

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