ジャングルベッドⅡ

午後から雨か雪の天気予報。傘を携えて出社。一日,翻訳本のゲラを読む。ドラフト,監訳原稿,入稿のときは覚束なかったが,ようやく内容が理解できるようになってきた。19時半くらいに退社。東武百貨店でお弁当を買い帰宅。娘は最終ゼミ後,友だちと夕食をとってくるというので,家内とテレビを観ながら食べる。

ツイッター経由で,1990年のシャレで演奏ったP-MODELのライブ(日比谷野音)から「ジャングルベッドⅡ」がアップされているのを知る。ここ数年,YouTubeなどでは「I AM ONLY YOUR MODEL」くらいしか上がっていなくて,それを観た人からダメなライブ扱いされていた気がする。私や友人にとっては,翌年の解凍P-MODELよりも遥かによいライブだった記憶があって,数年に一度,思い出したかのように,意義申し立てしたくなった。

で,「ジャングルベッドⅡ」を観て,ほら,やっぱりよいライブだったじゃないかというのが正直なところだ。

この日はメインが平沢ソロで,シャレP-MODELは途中で登場した(はず)。「此岸のパラダイス…バンド」から三浦が抜け,代わりにことぶきが入り,ドラムに荒木を据えたツインドラム仕様だった。

「美術館」から数曲は平沢がボーカルでツインドラム,途中からケラがボーカルになり,ドラムは田井中さん一人,「バイク」で平沢がボーカルに変わったタイミングでドラムは荒木に。最後の数曲はツインドラムだった。なんで覚えているかというと,平沢が荒木の名を呼んで始まったのが「バイク」だったからだ。荒木が叩くのに,なんでその曲をという按配。

ツイッターでは田井中さん最後のドラム演奏と指摘されて,そうかと気づいたのは,とにかく荒木がドラムを叩くP-MODELの恰好よさのほうが何倍も印象に残っていたからだ。

この動画を昨夜だけで10回くらい繰り返し観て,平沢もいい顔つきだなあと感じた。解凍以後,ああいう表情でステージに立つことがほとんどなくなった気がする。改訂から20年近く,ライブに足を運ばなかったので,そんなことはないのかもしれないが。とにかく,ああ,これが平沢だし,こういうミュージシャンの演奏をなまで見たくてライブハウスに足を運んだのだと思い出した。

とはいえ,他者を撥ね付けるようなまなざしをしぐさで演奏するミュージシャンはほとんどいない。数年前,踊ってばかりの国のライブをたまたま観て,下津さんのまなざしとしぐさに,個々には全然違うのだけど,当時の平沢に共通する匂いを感じた。以後,年に数回,踊ってばかりの国のライブに出かけるようになったのは,音もさることながら,妙な緊張感に誘われてのことだ。

ここ数年,平沢ソロ,核P-MODELのライブを観て,トラブルが起こると何だかホッとするというオペラファンのようになってしまったのは,そうでもなければ,フロアに対峙するような佇まいを平沢が見せないからだと思う。ソフトバレエに感化されたのか,まるで「私を見て」とでもいうかのようにステージに立つ平沢には惹きつけられるところがほとんどない。

ただ,当時のP-MODELが撒いたなにものか(言葉にしづらいけれど,あえて言うと違和感であって,それは自同律の不快かもしれない)は,いまもライブハウスのどこかに同じ類で生息しているはずなのだ。それを求めるならば,いまの平沢のライブを観るより先にすべきことがある。とにかくライブハウスに足を運ぶことだ。

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