ジャングルベッドⅡ

一日中,雨。19時半まで仕事をして会社を出た。高田馬場で休憩。日高屋はめずらしく混んでいた。島田一男の『その灯を消すな』を少し読み進める。帰宅して夕飯。

まだP-MODELは凍結前で,そうとは知らずライブに通っていた頃のことだ。昌己と飲んでいるとP-MODELのドラムについての話になった。「ポプリ」の田井中さんのドラムはうまいのに,「パースペクティブ」はあんなに下手なんだろうというあたりについてだ。

昌己ははじめて「ポプリ」を聴いたとき,「Aqua life」のリズムパターンにかなり衝撃を受けたという。つまり,英国のニューウェイヴバンドはおよそ考えつかないパターンというかノリだというのだ。気持ち悪いけれど,理にかなったドラミングだと。他の曲のドラムもいきいきしている。テクニックの巧拙ではなく,うまいドラミングだ。

ところが「パースペクティブ」になると途端に下手になる。唯一,「シーラカンス」のリズムはバンドが一丸となっていてよいけれど,他はどうしたのだろう。

平沢のインタビューを読み,1つ理由がみつかった。つまり,「パースペクティブ」のドラムのすべてを田井中さんが叩いているわけではないのだ。特殊な録音のしかたでまとめられたこのアルバムでは,田井中さんが嫌気をさした部分を平沢が叩いた音で埋めているという。また,一打一打を録音してトラックに嵌めていった箇所もあるらしい。つまり,つぎはぎして,極力,ノリを取り除きながらつくられたのだ。

ところが,同じパターンの繰り返しが多いこのアルバムの曲では,ノリを取り除いたことで,結果,リズムが単調で,やけに稚拙に感じられる箇所が少なくない。

昨年末,石若駿と岸田繁の対談で,岸田がこんなことを言っている。

どうしてもポップスやロックのドラムを叩いていたら、普通は縦割りで1小節か2小節のパターンを繰り返すような曲が多くなる。小節単位で区切ってもわからないような。でも、くるりの曲はコード進行が変わる曲もあるけど、モチーフが長い曲が多くて。しかも“お行儀がいい作り”になっているはずなんですよね。ジャズの基本的なコード進行であるツーファイブワンもちゃんと入っていたりするし、例え変わったコード進行に聴こえても、ちゃんと次の音へのつながりみたいなものはヒント的に入れているから。音楽理論のベーシックを踏まえた作りになっていて、長いモチーフがきちんと1つにつながっている。だからくるりの音楽を縦割りの1、2小節単位で捉えて演奏すると、1つの長いモチーフが分断されてしまうんです。最近はデモを作るようになったけど、普通にドラムのパターンを作っていたら全然盛り上がらないみたいなことがあって。その理由を考えていたときに、「やっぱり石若くんすげえな」と思いましたね。“曲を作る”っていうんですか……ほら、“歌うドラム”とか“メロディックなドラム”とか、そういうふうに表現されることが多いやん?

https://natalie.mu/music/pp/answertoremember

後にCM音楽の仕事を通して,決まった尺のなかで,平坦ではないリズムをつくるようになった平沢だけれども,「パースペクティブ」当時は,たとえば「HEAVEN」の3分弱のなかで,リズムを面白く着地させるための努力を怠ったのだろう。当時,ピーター・ガブリエルは,リズムボックスを鳴らしながら曲をつくると発言していた頃なので,まあ,そういう風潮だよと言ってしまえないこともない。

旬を経過して,P-MODELの曲にもくじ引きやテープ編集(「パースペクティブ」とは違う意味で)が導入された後から振り返ると,なおさら「パースペクティブ」のドラム,リズム編集は稚拙だったと思う。

ということを考えながら「ジャングルベッドⅡ」をまた聴いてしまった。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Top