ズミラマ

早稲田通り沿いのブックオフを覘いたときのこと。泉昌之の『ズミラマ』が均一棚に並んでいたので,つい捲ってしまった。探せば家のどこかにあると思うので買いはしなかった。1ページ4コマのパノラマ映画を意識したコマ構成に映るけれど,連載当時を知る者として思い出すのは篠山紀信の「シノラマ」だ。

「ズミラマ」が意識したのは「シノラマ」であって,「パノラマ」と仮に関連づけられたとしてもそれは後付のものだろう。

石森章太郎が1950年代末頃,パノラマ漫画を思いつき,出版社と掛け合ったものの受け入れられず,そのまま縦に割っていったページをつくったくだりが,彼の自伝マンガのどこかに載っていた。同じ頃,どのページにも登場人物すべての姿が描かれているマンガを考えたという流れだったと思う。

石森章太郎の思いつきは,映画をいかにマンガのコマに落とし込んでいくかという工夫の一環だったのだろうけれど,泉昌之の『ズミラマ』は,ただ,「シノラマ」をもじって4コマ漫画を描くというアイディア,それも1ページにつき4コマしか描かなくてよいことも関連しているのだろう。

昭和50年代の終わりから60年代にかけて,4コマ雑誌隆盛時期があった。いがらしみきおが名を上げたのはその時期だ。弟はこの手のマンガ雑誌が好きで,発売日にコンビニで買って読み,私にまわってくることしばしばだった。月刊誌(もしかすると隔週だったかもしれない)で4コマ漫画ばかりの特殊な空間だったものの,後に山上たつひこまでが4コマ漫画を描くようになった。

「ズミラマ」を今,手にとっても(少ない人数だろうけれど),当時の雰囲気とともに捲らなければ,零れ落ちてしまうものが少なくない。とくに泉昌之のマンガは。零れ落ちるものを拾い集めたとすると,それが泉昌之のマンガ評になる気がする。

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