上野

仕事で夕方まで御徒町にいたので,帰りに近くの古本屋に寄ってから帰ろうと思う。検索すると,行ったことのないブックオフが稲荷町にあった。以前,徹たちと忘年会だったかをしたビリヤニがうまいカレー屋が近くにあって,弟が帰国した際にも同じ店に入った記憶がある。店のまわりはなんだか殺風景に変わっている。

地下鉄の駅を過ぎてもう少し歩くと,1階と地下1階が店舗になっているブックオフを見つけた。1階から入り,地下に通じる階段を下ると文庫,単行本などのコーナーになっている。しばらく眺て五木寛之の『晴れた日には鏡をわすれて』と関川夏央の『石ころだって役に立つ』を購入。広そうな外見だけれど,店内はそれほど広くない。

夕飯を買って帰ろうと駅のあたりの店をチェックするもののめぼしいものがないので,中野まで戻ることにした。『石ころだって役に立つ』を捲っていると,関川夏央の文章がうまく嵌っている。この人の文章は,内容と文体が乖離することがときどきあって,それが隔靴搔痒になってくることが多いのだけれど。片岡義男が原節子を書いたときのような感じだ。

中野駅に着き,ヤミヤミカレーで夕飯を買って帰宅。

古本フリマ

2014年5月,みちくさ市にはじめて参加した。それから5年間,ときどきの古本フリマは何かわからないものの,どこか区切りのようにして立ち現れた気がする。

新型コロナ禍で4年間,みちくさ市は休止して,この4月に復活する。応募日当日,メールを書いて準備して投函,なんとか場所を確保することができた。参加してきた5年間と休止の4年間。不思議と休止の4年間が短く感じるのは再開が決まったからなのかもしれない。

みちくさ市以外は,宇都宮の古本フリマに参加したくらいで,たぶん他には参加していないはずだ。みちくさ市絡みで,渋谷LOFT9の古本市に参加したことはあったものの。

この前,事務所で地味に開いた古本フリマで,初日早々に「nice things.」が2冊,伊丹十三の文庫が別々の人に2冊売れたような驚きがおもしろくて,たぶん古本フリマに参加しているのだと思う。”よい本”とは決して言うつもりはなく(たぶん何があっても自分が選んだ本を”よい本”と言う日はこないだろう),”本好き”などとも口がどうなっても言わないけれど,それでも自分で選んだ本が他の人に選ばれるたのしさを伝えることはできる。

4月のみちくさ市がたのしみだ。

痛飲

サワディが改装するとのことで,週末,昌己と待ち合わせて夕飯をとりにいった。

四半世紀前,このあたりはタイ料理店よりもミャンマー料理店の方が多い場所だった。妙正寺川沿いには数軒のミャンマー料理屋が開いていた。住人でなければ立ち寄る場所はなさそうな駅前の様子を,その10年くらい前から通り過ぎただけだ。住んでみると,居心地は決して悪くない。

ミャンマー料理店よりもサワディに先に入ったと思う。20世紀の終わり頃,タイ料理店で飲む機会が増えた昌己を誘って,急な階段を上っていたのだろう。昔の「東京おとなクラブ」の情報によると80年代半ばくらいはレンタルビデオ店が入っていた場所にサワディはある。

当時は,おばさんがひとりで店を営んでいて,入ってから出るまで,他にひとりも客が入ってこないときはめずらしくなかった。日によって味にばらつきはあったような気がするけれど,パッタイを美味いと思ったのはサワディで食べてからのはずだ。タマリンドの実をもらい,あのソースがこの実由来であることを教えてもらった。

6,7年後,おばさんはタイに帰国することになった。当時の私たちとおばさんの年齢差は実のところ,大したことがないことを週末に出かけた帰りに知った。当時,今の私たちにいくつか歳を加えたくらいの年齢だったのだそうだ。

かなりコストパフォーマンスがよかったサワディは,このところ,少しコストパフォーマンスがよい店に変わった。変わる前は,ハイボールなどが1杯200円代で頼めたのだ。今は倍くらいになったので,その日はワインをボトルで頼み飲んだ。帰り際に,お店の人と昔話をしばらくして,線路を渡った先にできた焼き鳥屋に流れた。二人でワインを1本空けた後だというにもかかわらず,そこで1時間以上,あれこれと話をした。もちろん,何の話をしたのかすっかり忘れている。

おとなしく仕事をした一日が過ぎ,日曜日の夜,築地で打ち合わせがあった。私を含めて4名で,日曜日の築地で営業している貴重な居酒屋で,3時間半くらい飲んだ。打ち合わせをざっと済ませて,それでも最初はビールを少しずつ飲んだ。ところが途中からワインをボトルで頼み,それでも4人いるから大したことはないだろうと踏んでいたものの,なかなかのピッチですすむ。

デキャンタを追加して,テーブルをきれいにして店を出たときにはすっかり酔っぱらってしまった。週末に痛飲が続いたのは久しぶりだった。

第二次マンガ革命史

少し前まで中川右介『第二次マンガ革命史—劇画と青年コミックの誕生』(双葉社)を読んでいた。私が生まれる前のマンガの歴史を,何人かのマンガ家を通して描くグラフィティ形式のノンフィクションで,こうした構成の本が昔から好きだ。

以前,著者の別の著作(『サブカル興亡史』)を読んだときには,サブカルは生まれる前のことに関する記述になると途端,軋むような表現になると思ったので,本書を最後まで面白く読めたのが不思議だった。それはたぶん私が同時代を体験していないからで,私よりひとまわり上の世代が読むと,どう感じるのだろう。

古本フリマ

2月下旬の地域イベント期間中,日替わり古本フリマを開いた。週末の2日間は,各日2,3店の店主さんに声をかけた。初日は仕事をしながらの開店だった。

その前から,かなりタイトなスケジュールで下版して,そのまま古本フリマと発送準備が並行したものだから,古本フリマを終えてから疲れてしまった。期間中は,想定外のことが起きてたのしかったのだけれども,体力の衰えをなんだか感じた。

初日,「nice things.」を2冊並べていたものが,たぶん同世代の男性の手に渡った。最初がこれだったので,久しぶりに町中を歩く人の不思議さを感じた。続けて,伊丹十三の文庫が3冊売れる。そのあとは,仕事関係の方がいらして,神吉拓郎の文庫本が売れた。

2時間くらいの間,目の前で売れていく本がだいたいそんな感じだった。地域イベントのくるのは多くが中高年の女性で,その人たちからはあまり反応がなかった。一緒についてきた連れ合いがターゲットになる商いというのを何と呼べばよいのだろう。

2日目は,一箱古本市でお世話になった方や出店されていらっしゃる方,実際に古本屋を営んでいる方が参加されて,本式の古本フリマっぽくなった。事務所前ではスイーツやパンの販売も声をかけたので賑やかだ。いきおい,あれこれと対応することが少なくなく,この時点でかなり疲労がたまった。

3日目は仕事関係で古本フリマ。朝から雨で,人出はそれほどでない。午前中はのんびりと過ぎ,午後からお客さんがときどき覘きにくるようになった。お客さんが仕事関係の相談をされたり,店主さんのお友達が夕方からいらっしゃったりして,その話し声につられて本を覘く方もいた。

3日間でそれなりに本が動いた。4月には,みちくさ市が再開されるというので,少し準備をしておかなければと思う。

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