赤い公園

「BEAR」が始まると,佐藤にスポットライトが当たり,あとはゲストミュージシャンが弾くキーボードのみ。しばらくすると下手に9月からの赤い公園メンバー3人が揃う。パーカッション類を手に,リズムを外したところで鳴らしたり慣らさなかったり。津野から藤本にタンバリンが渡ると,電球の光が灯ったかのように何かを思いついた様子だ。あきら100%のマネをステージ上で咄嗟に思いつくミュージシャンたち。今までの緊張感がグニャグニャとほぐれる。曲の終わり,歌川のピアニカソロ,津野のやや崩した感じのキーボードが被る。

「最後の花」に続けて「闇夜に提灯」「KOIKI」がアッパーな音で鳴り響く。「黄色い花」ではゲストミュージシャンが揃い,ステージがさらに派手で明るくなる。本編ラストは「ほら」。

アンコールは4曲。最後の最後「NOW ON AIR」では佐藤がステージの客に支えられたものの,ロールすることなく,まるで力ない王蟲の上のナウシカのようだった。

ダブルアンコールの声が鳴り続くなか再び客電が灯り,佐藤在籍最後のライブが終わった。

お前は白衣装に着替え,4人揃って「ふやける」が演奏されるのを期待しなかったのかと問われれば,否定できない。しかし,脱退についてあらたまって話があったわけでもない。新譜自体がブループリントのようなものだったのだから,屋上屋を重ねる必要はなくて当然なのだろう。

King Crimsonだって1974年7月,最後に“Epitaph”や“Mars”を演奏しなかった。P-MODELは1988年12月,最後に“1778-1985”で終わった。もちろん赤い公園は解散したわけでない。まだまだ続くのだ。

赤い公園

オープニングは「カメレオン」。ステージ下手に3人のホーン隊を従えて,スネア連打から始まった。新譜を聴いたときに感じたリズム隊の無敵感に拍車がかかる。ポール・トンプソンのドタバタしたフレーズをスティーブ・ジャンセンが叩いたかのようなドラムに凄まじいベースラインが絡む。これまでフリーキーなようでアレンジの枠からはみ出なかった赤い公園が,この曲の後半では巧みな暴れ方で盛り上がった。

「AUN」はこの曲をポップミュージックの範疇に収めてしまった勢いそのままに,同期との絡みも美しい。

轟音からスパニッシュに展開する「急げ」。ここから「サイダー」までは,曲ごとにカメレオンよろしくバンドの姿を擬態させて畳みかけた。「塊」「西東京」「のぞき穴」へと続く音圧は蛇の道はヘヴィーな感じだ。「サイダー」は“Third Uncle”よろしくリフで押し切る。

曲ごとのライティングは,このバンドにしてはかなり精緻に組み立てられ,どれだけ練習したのか知らないけれど完璧だ。

昔,テレビ番組で,美空ひばりのものまねで名を馳せたモノマネ歌手が,商店街を歩きながらアドリブで美空ひばりの曲を歌う場面があった。似ているなと思ったのもつかの間,本家のレコードを被せて,キーが驚くほどずれていることがあからさまになった。絶対音感でも持っていなければ,出だしの音をピタリ合わせて歌えはしない。佐藤が抱える困難は,難易度の高い曲ばかりのなか,出だしをずらさずに歌いはじめられるかというところにあると思う。もちろん曲さえ始まれば佐藤の独壇場だ。

「journey」「勇敢なこども」「交信」が後半のピークだった。赤い公園が「勇敢なこども」を演奏し歌う場面を見て,どうしてだろう。胸が詰まった。(続く)

赤い公園

昼から義父の一周忌。昨年に比べると暑さはそれほどまでにない感じがする。

田無タワーを見ながら14時くらいに一式を終えた。新青梅街道沿いの木曽路で昼食。木曽路は法事客相手が柱の一つだから当然だけれど,こういうときはつい利用してしまう。夜は赤い公園のライブに出かける予定なので,一度,家に戻り,着替える時間を確認していたところ,開演が18時だということに今更気づく。開場は17時だ。15時過ぎ,まだ料理は終わっていない。

会計を済ませ,田無駅まで歩く。西武線が遅れていたおかげで急行に乗ることができた。16時半に家に戻り,家内,娘も10分ほどで着替えを済ませて東京テレポートセンターに向かう。

Zeppダイバーシティ東京に着いたのは17時半を回っていた。すでにフロアは満杯で,1階下段出口付近にスペースを確保した。

開演の案内はボーカルの佐藤だ。今月いっぱいで赤い公園を脱退する,ある意味記念ライブだから全体,佐藤の一挙手一投足に目が向いてしまうのはしかたあるまい。数分後,佐藤のラジオだろうか「地球生れ」をループしたSEとともにメンバーが登場した。

セットリスト

  1. カメレオン
  2. AUN
  3. 急げ
  4. ジョーカー
  5. 西東京
  6. のぞき穴
  7. 絶対的な関係
  8. 今更
  9. サイダー
  10. 恋と嘘
  11. いちご
  12. プラチナ
  13. Journey
  14. 勇敢なこども
  15. 交信
  16. BEAR
  17. 最後の花
  18. 闇夜に提灯
  19. KOIKI
  20. 黄色い花
  21. ほら
  22. セミロング(アンコール)
  23. スーパーハッピーソング(アンコール)
  24. 楽しい(アンコール)
  25.  NOW ON AIR(アンコール)

赤い公園

赤い公園の新譜「熱唱サマー」を手に入れた。前作がオーバープロデュースのように感じたので少し不安だったものの,三曲目までを聴いてすっかり不安は払拭された。

全体,これまでにくらべてBPMが5くらいアップしているにもかかわらず,そのスピード感にもたれかかっていない。それが演奏上いちばんしっくりいったのだろう。

もともとリズム隊のセンスのよさには定評があったバンドだけれど,まあ,今作のリズム隊の暴れ具合は,“RED”の頃のKing Crimsonを思い出すくらい。前作に続きそこにギターまで一丸となるから,変幻自在な曲をバンドが操る様はなんだか凄い。

打ち込みを全面に出さなかったこれまでから一変,打ち込みをガイドに本編になだれ込むのは数年前に六本木で見たライブの冒頭を思い出した。あのときは,「木」のリフをデータに置き換えたものを鳴らし,そこにバンドが被っていくという始まり方だった。

とりあえずCDを一通り聴いて,ふろくの「情熱公園」を見た。メンバーより数年年下の娘は,バンドメンバー同士のやりとりの“あるある感”に何度も笑っていた。私はといえば,まるで大槻ケンヂが描く半自伝的小説の一場面のような光景の連続に,バンドっていいなとつくづく思ってしまった。

今作のレコーディング前にリードボーカルの脱退が決まったことを何かで読んだ。先入観なのだろうけれど,今年に入ってからのメンバー間のバランス,というかぎこちなさを感じてしまい,映像は酷なことをするものだ,とまったく逆の感想ももった。

日曜日のライブには家族揃って出かける。どのようなライブになるのか楽しみだ。

夏バテ

夏の暑さが戻ってきてしまった。

ひとたび戸外に出ると,非道い暑さでむわっとした空気がまとわりついてくるかのようだ。通勤途中は『燃えよ剣』の下巻を読み進めている。新聞連載だからだろうか小説としてのバランスは決して安定していない。昔,同じように不安定な小説を読んだ記憶があるのだけれど,作者,タイトルとも思い出せない。

ひとつひとつのエピソード,事件を描くだけで一冊の小説が必要なところ,あらすじを追うだけで進むため,ついページを捲るスピードは速くなってくる。寝る前にさらに読み進めたので,残りわずかだ。

結局,ここから矢作俊彦の『悲劇週間』を読み返してしまうのだろうな。

夜は家内と待ち合わせて,初めて入る店でとった。L字型のカウンターに4人掛けのテーブルが2つの小体な店。油揚げでコロッケの具を包み揚げた料理が美味しかった。昔,母親がよくつくったコロッケの味を思い出した。クラフトビールと赤ワインを飲む。チリのフルボディが効いたのか,家に帰ってから2時間ほど眠ってしまった。

一日中,だるくて眠たい。からだも重い。夏バテだ。

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