2007年2月

02月01日(木) 掻巻  Status Weather晴れ

 「朝になったら抜け出てたのよ。よほど寝相が悪いのかしら」
 娘用にと通販で掻巻ふとんを買い求めた家内がいう。寝ながら袖に通した腕を抜くのは確かに容易ではあるまい。そんなことを思い出しながら,娘を寝かせるため,掛け布団を整えていたときのことだ。
 「それ反対でしょ」
 私は掻巻ふとんを,敷き布団の上に,着物を置くようにそのまま敷いたのだった。家内はそれが反対だという。
 「それじゃ,掻巻から抜け出たときはどうやって着せたんだ?」
 「その反対によ。私,昔からそうしていたけど」
 つまり,家内は着物の背にあたる部分を前にして袖に腕を通してふとんに入っていたというのだ。
 「かなり眠づらいと思うんだが,それで肩こりになったんじゃないのか」
 「そうしないと背中がモコモコしちゃうじゃない」
 聞くと,娘も私がしたように着ようとして家内に直された(?)のだという。
 掻巻ふとんをどう着ているのか,なんだかよく判らなくなってきた。



02月03日(土) 歌詞  Status Weather晴れ

 スタジオ入りの準備としてNew Orderの歌詞を探していた。“Ceremony”だけ見つければよかったのだけれど,ついあれこれ検索して,“True Face”を読み始めたあたりから,自分が20代の頃に,洋楽の歌詞をほとんど読んでいなかったことが思い出され,それは少し残念だった。

 たとえば,1956年生まれだというバーナード・サムナーが“True Face”の歌詞を書いたは30歳前後だろう。でも,そこに漂うのは,過去を振り返るかのようにして描かれる“此処ではない何処か”だ。
 20歳になったばかりの青年が,自分の数年前の奇矯さと折り合いをつけることなく,ただその姿の前に佇む,誰にもそんな時期はあるように思う。
 この歳になって“True Face”を繰り返し聞き続けることになるとは。最近,昌己と話している“40歳からのニューウェイヴ”というのは,なかなか興味深い。
 もちろん,それはこんな案配でなのだけれど。

 「まぁ,そんなところだ。俺にとって人生のアセリ,もっと正確に言うなら実年齢と実人生の進捗のアンバランスへの不安など,この程度のものなのだ。」
   矢作俊彦「ライオンの夢」(『仕事が俺を呼んでいる』新潮社,1993)



02月04日(日) 帽子  Status Weather晴れ

 家内と娘にそろって,服装にメリハリがないと言われた。アースカラーといえば聞こえはいいが,地味な色のシャツとセーター,チノパンツにローファー。自分ではそれなりに変化をつけているつもりなのだけれど,傍からはいつも同じに見られているようだ。 
 秋の終わりから春先まで,外出時に被っている帽子はモスグリーンのハンチングだ。15,6年前,当時,弟が働いていたミラノを訪れたとき,ノミの市(?)で手に入れた。表面に縫い目がない一枚の布を型に嵌めてつくられた帽子は,とてもしっくりするので,以来,ずっと被っている。買った当時は,前後を逆にして乗せていたのだけれど,猫背気味の肩と短い首に囲まれたあたりに,たとえハンチングとはいえ,帽子のつばがぶつかってしまうため,しばらく後からは普通に被るようになった。
 同じとき,ガレリアの入り口付近にある店で濃緑の中折れ帽を買ったのだけれど,30代を通して,しっくり被ることはできなかった。



02月07日(水) 文庫本  Status Weather晴れ

 最近,知人にすすめられた ジャンリーコ・カロフィーリオの『無意識の証人』(文春文庫,2005)を出張先で買い求め,移動中の電車で読みすすめた。
 第1章はポール・オースターの小説に似た感じだったのだけれど,第2章から,ややミステリ寄りの物語になだれ込みつつあるところまで読んで,家に辿り着いた。

 その後,折り返しを過ぎたあたりまできて,これからの展開は判らないものの,マカロニ・ネオ・ハードボイルドといった印象。相変わらず,ところどころポール・オースターが顔を出す。



02月08日(木) decades  Status Weather晴れ

 接する機会はあったにもかかわらず,1984年になってJoy Divisionを聴いたことをずっと引け目に感じていた。これがXTCならば,友人のおかげで出たばかりの“Black Sea”から聞き始め,1982年に“English Settlement”に触れていたあたりで,それが誰に対してのものかはさておき,何らかのエクスキューズとなっている。
 1984年に,遡ること4年前は,追いつけない昔に映った。数多のバンドが七節のように姿を変えた。連載マンガの山場になって初めて読み始めた読者のように,私は慌ててデビュー当時の音から手当たり次第に聴く。当時,そんなふうにして接したバンドがいくつもある。ギターバンドだった頃のThompson Twinsや,ヴィンス・クラークがいた当時のDepeche Modeなど,いわゆる連載開始の状況を知らないバンドを聴いた記憶は,数年前から接していた昌己とは決定的に違うのだと,以来,20年以上感じていた。

 ところが,時すでに2007年。私が永遠に追いつけないと見上げた4年どころか,下手すれば初めて接するまでの20年にわたる間隙に臨むこともあるのだと最近,思い至った。私からすると,もはや連載と単行本の差どころか,連載と完結したマンガ文庫ほどの差に見えるのだけれど,当人は何の構えもなく,スネークマンショーよろしく“いいものもあれば,悪いものもある”といった案配。



02月11日(日) 名前  Status Weather晴れ

 矢作俊彦の短編集『舵をとり 風上に向く者』(1986)に収載された小説は,連載時とタイトルだけでなく登場人物の名前まで微妙に変更されている。それは,こんな具合。(単行本←連載時の順,変更されたもののみ)

キューカンバ・サンドウィッチ(彼)←キューカンバ・サンドウィッチはいかが?(彼)

愛と勇気とキャディラック(瑛子)←同(玲子)

ON THE COME(良)←同(英二)

 単行本が出たとき,やたらと“RYO”が登場すると感じた記憶があるのだけれど,今更ながら,1作で英二が良になっただけだったとは。
 大きく文章に手が入っているわけじゃないものの,全体,句読点は細かく変更されている。
 後の短編集『夏のエンジン』(1997)は,2作が連載時とタイトルが変わっていたはず。



02月14日(水) 40代のニューウェイヴ  Status Weather晴れ

 目的はないものの,まずはスタジオに入ってしまうことに決めて後,週末に“Dead Souls”と“Ceremony”のベースラインを追っている。
 “Ceremony”は,もっとニール・ヤングっぽくはなかったかと思い,それをきっかけにして,オリジナル(というとJoy Divisionのライブ音源を指すことになるのかもしれないが,それはさておきNew Orderのスタジオ音源)よりも90年代以降,Galaxie500のカバーをよく聴いてことに気づく。
 編成上,ベースはキーボードで代替するので,そんなことを思いながら“Dead Souls”を聴いていると,いつの間にか“Blue Monday”になってしまう。



02月21日(水) 確率  Status Weather晴れ

 酔っぱらった帰り道,その時間まで開いていた古本屋に誘われるように入ってしまい,雑誌の棚に一冊だけ差し込まれた「野性時代」を,ふだんならしないのに,そのときばかりは引き抜き,なぜか目次に目をやってしまった。それが矢作俊彦の「globefish」が掲載されている月号である確率がいかほどのものか,判らない。判らないけれども買い求め,酔い覚ましに入った喫茶店で読み終えた幸福は何にも代え難い。



02月22日(木) 40代のニューウェイヴ 2  Status Weather晴れ

 というわけで,会社帰りに待ち合わせた。昌己とスタジオに入るのは10年振りくらいのことかもしれない。その頃でも,会社帰りということはなかったように記憶している。ボーカル,ギターを加え4人編成となると,最後に入った平成の初め以来,いったいどれくらい経ったのか判らない。(続きます)



02月23日(金) 40代のニューウェイヴ 3  Status Weather晴れ

 少なくともこの15年,スタジオ代金というものは,ほとんど上がっていないのではないだろうか。
 ロビーにメンバー募集のチラシが見当たらなかったことと,テーブルに置かれた音楽雑誌から「ロッキンf」が消えていたことを除くと,受付カウンターから何から,15年前に出かけたときの様子と何一つ変わっていない。当然,15年分の地層が至るところにこぼれ落ちてはいるものの,それさえ,どこまで遡れば出自に辿り着くのか判りはしない。スタジオの時間には“新品”とか“ピカピカ”の文字がないことくらいは理解していたつもりだ。とはいえ,ミキサーの卓はいうに及ばず,レンタルしたKORGのTRITONさえの下手すれば,わが家のT3よりも古びているのを目の前にすると,結局,はじまりから,同じようなスペースと料金で,永遠に役割を果たし続けているのかもしれないと考えてしまうのだ。
 10畳ほどの部屋は,ドラムセットと,アンプ,キーボードにミキサーが揃っても,平均年齢40歳の4人には十分に広さだった。

 イアン・カーチスのパート,つまりはボーカルを心よく引き受けてくれた久米君は,最年少の37歳だ。その響きが,彼をして“Dead Souls”を歌うことに留まらせたことを,私たちが知ったのは翌日のこと。ネットで拾った歌詞カードを手に,おそろしいほど彼の歌声はこの曲にはまっていた。これはもちろん褒め言葉だ。(続きます) 



02月24日(土) インターミッション  Status Weather晴れ

 工事中のままだった“music”のページが,ようやく再開できる状況になりました。
  ↓こちらです。
調整中

 これまで触りだけアップしていた曲も(よしあしはさておき)長尺に置き換えました。
 *マークが付いている曲は,ライナーを書いていないため,直接,曲に繋がります。

 とはいえ,音の悪さに変わりはないので,あらかじめその旨,ご諒解ください。
 KORG T3 WORKSは,追って補完していく予定です。



02月25日(日) One More…  Status Weather晴れ

 DGMのPodcastでKing Crimson名義の“My Hobby”が配信されたのが2月23日。クレジットはFeb. 22nd, 2007-Denver。嫌な予感がした。続けて,同じ日にもう1曲“The Sailors Tale”まで配信されたのを目の前にし,それは確信めいたものに変わった。

 2月22日に,アルバム“Islands”期のドラマーであるイアン・ウォレスが亡くなったのだそうだ。半年ほど前,同じようにボズ・バレルを哀悼したばかりだというのに。



02月26日(月) 繰り返す  Status Weather晴れ

 岩波新書の『離散するユダヤ人―イスラエルへの旅から』(小岸昭,1997)を,通勤途中で読み始めたのは年明けすぐのことだと思う。一度,読み終えたものの,全体像がよく理解できなかった。すぐに最初に戻って,数行読んでも,こんなところあっただろうか,と記憶に留まらない。
 結局,そのまま,2度目を読み終えた。

 すぎむらしんいちの『ディアスポリス』(講談社)に触発されたわけではあるまいが。



02月28日(水) 40代のニューウェイヴ 4  Status Weather晴れ

 その日,ギターを携えて職場にやってきた那智君と初めて会ったのは,14年前の年末のことだった。仕事関係の忘年会でたまたま近くの席になった。差し障りにない話がどのようなきっかけで,80年代ロックの話題に終始してしまったのか忘れてしまったが,止まなくなってしまったのは話がマッドネスに流れたためだったことは記憶している。いまだ,はじめて会った人とマッドネスの話になったのはあのとき1回かぎり,思えばそれは貴重な忘年会だった。
 ペイル・ファウンテンズとかオレンジ・ジュースとか,ネオアコが好みでひとりギターを弾いていると聞いた記憶はある。当時はまだ,昌己とスタジオに入っていた頃だったはずだから,声をかければ,違った展開になった可能性もあるものの,職場が違ったのでその後,ほとんど会う機会はなかった。
 昨年の夏の終わり,知り合いの伝を辿り,連絡をとったあたりから頻繁なやりとりが始まった。11月には10年振りにスタジオに入った。そのときのメンバーは,那智君,久米君,その後すぐに京都へ越した影野さん,私。
 先のmusicのページにアップした“フロアへようこそ”のカラオケに那智君がカントリー&ウエスタン風のギターを被せてくれて,久米君と影野さんにボーカルを頼んだ。

 そのときの歌詞をこっそりペーストすると(続きます)

“Welcome to the Floor”

So you know, it’s the end of the world
But do you know the show is going on
We’ll run into the night because the wind is blowing hard
I can’t wait until you catch your breath What’s going on out there is bona fide the real thing, honey

hurry up
get it up
lights are up
come on up, it’s all yours
welcome to the floor

 タッタッ タタッ タッタッ

1 2 3 4 5 6 
There ain’t no astronauts here

There’s no time for chilling out
Though it’s only the two of us here
You gotta get some more of that To rid you of your bitterness Hanging all around you like a spider's web

The music’s playing out into the farthest end A giant parade in a no-man’s land You see

hurry up
get it up
lights are up
come on up it’s all yours
welcome to the floor baby

 タッタッ タタッ タッタッ

1 2 3 4 5 6 
There ain’t no astronauts here




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