2008年2月
02月01日(金) 謎 |
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「2.99999999999999…」 娘がいう。 「9999999999……っていう数字があるの。それを聞いた人が『それ,私の仕事だ』だって。さて,なんでしょう」 家内と二人,食事中にもかかわらずあれこれ答えたが,トゥリアの事故に出くわした桑田くらいのかすり具合。 「大ヒント。わかっちゃうなあ,これじゃ。なんとか『さん』」 で,私の答えがあたった次第。うれしくはなかったが。 「わかった。保母さんだ」 「そう」 |
02月02日(土) 解釈 |
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堀田が授業に携えてくる英英辞書の小口は土で汚れた跡があった。それは彼がオーストラリア留学中,現地の子どもの家庭教師をしていた頃のことだという。 日当たりのよい春先の午後。窓にむかって添えられた机で調べものをしていた彼の目の前をのら猫が通り過ぎた。気に入らないことが何であったかは伝えられていない。堀田はいきなりドアを開けると,猫めがけて手元にあった辞書を投げつけた。もちろん猫は身をかわすまでもなく,辞書はあらぬ方向へ飛んでいく。 その辞書が教卓に乗っていたはずだ。 入学して初日,私たちのクラスの担任となった堀田は,おそろしく度の強い眼鏡をかけ,グレーの背広に無造作に分けた髪が,尋ねるまでもなく身支度に無頓着であることを示していた。ガラスの奥の目は,教師の眼差しからほど遠い無関心さだ。それでも,ひとくだり挨拶があったのち,彼はこう続けて。 「おまえたち,これだけは言っておくが,その場で,こう言うであろうと他人が期待しているようなことは決して言うな」 高校に入って初日,他にも言うことはあるだろうに。なおさら,後々まで堀田の言葉を思い返した。(つづきます) |
02月06日(水) 解釈2 |
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現代国語の山田は眼鏡をかけ代えたトニー谷そっくり,ウルトラマンと命名された物理の教師や,学祭のキャンプファイヤーで鬘であることを指摘された日本史の教師,思えば高校時代に出くわした教師はキャラクターだけは立っていた。ただ,はじめ堀田に度肝を抜かれたため,教師のほとんどは,その他大勢の魑魅魍魎といった案配だ。 堀田の言葉を忘れないのは,彼の声から,こ奴は心底そう信じているのだとしか感じられなかったためだ。後のP-MODELのライブに出かけるようになり,anotherとthe otherの違いが至るところで軛になるようになったころのことだ。パンクスのように反対を唱えているとばかり思っていた堀田の言葉が,実のところanotherを指していたのではないかと,そんなふうに思えたのは,やはり退化の軌跡なのだろうか。 |
02月10日(日) ウェブログ |
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今日の日記です。 このところ仕事が忙しいので,会社へ行っていたときのこと。昼飯をとりながら,ネットを検索していたはずが,気がつくと,どうしたことか自分のブログページをつくってしまっていた。 このところ滞りがちのこのページがあるにもかかわらず。 さて,どうしようというのだろう。 |
02月11日(月) わざ |
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このところボーカルを引き受けてくれている久米くんと飲んでいたときのこと。三十路既婚女性という,われわれの飲み会には希有な女性と3人で餃子を囲みながら,あれこれ話を散らかしていたためであろうか。ボーカルスタイルについて,新奇軸を模索していた。 誰が言い出したのだろう,腹話術でリードボーカルが歌うなどと。 「そりゃいいよ,即,プロデビューじゃないか」 「口開けてないんですから」 「凄いなあ,リードボーカルが口を開けていないなんて」 「そのうち,客も腹話術習得したら凄いライブです」 「誰も口開けずに,歓声が飛び交うのは気持ちいいよね」 まずは,腹話術を学ばなければ始まらないが。 |
02月12日(火) The Big Sleep |
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今日の日記です。 矢作俊彦の新連載「チャイナマンズ・チャンス」を読むために「野性時代」3月号を手に入れた。 それにしても,出だししばらくからチャンドラーの『大いなる眠り』が見え隠れするのは,意識的なものだろうか。よもや,手癖で小説を書くことはないだろうから,意識してやっているのだろうけれど。 新連載が雑誌巻末というのは,これ,完結する保証はないというアピールなのか? |
02月14日(木) コツ |
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カウンター8席程度しかない近くの中華そば屋でのこと。 この店,ときどき,週替わりで普段はないメニューを出すのだけれど,その週はタイラーメンだった。ライスヌードルをベースにパクチーともやし,それに肉団子が添えれている。いわく「タイの屋台の味そのものです」。 この店のラーメンは旨いのだけれど,カウンターに着いてからであっても,食べ終わるまで40,50分はかかる。客はそれを承知で,ひたすら注文が出てくるのを待つという図式だ。タイラーメンを注文し,すすっていると,先に入った客が食べ終わったらしい。 「旨かったです」 「そうでしょう」 「この肉団子,手が込んでますね。こんなに細かくすりつぶすなんて,普通できないですよ」 「そう,できないですよ,これ。だから買ったの」 「……(絶句)」 「これ,ぜったいできないですよ。高いんですよ,また。うちで普通に出したら,1個100円はつけないと出せない」 「また,来ますね」 「これ,テイクアウトもできるから,言ってくださいね」 「今日は,食べたばかりだし,普通はなかなか来れないしね」 「それじゃ,だめだね。またよろしく」 |
02月17日(日) ネコ |
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「あ,このネコあれでしょ」 「えっ?」 「ウラオモテヤマネコ」 「……」 「はじめて見た,私」 「パパも見たいや,ウラオモテヤマネコ」 |
02月24日(日) まね |
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まねしたくてもできないことと,まねしたくないことがまったく別だと気づいたのは銭湯でのこと。 あるとき,銭湯の湯船に入っていると,ひとりのおじさんがサウナから出てきた。そして,そのまま,脱衣所へ出ていったのだ。 私は,彼の行動をまねしたいとは一時たりとも思わなかった。 |
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