2009年7月

06月02日(火) ケータイ  Status Weather晴れ

 ある日のターミナルステーション。遠距離へ出発する特急が停まっている。恋人同士と思しき二人。男が旅立つ女を見送る。それなりの感傷とともに電車の扉が閉まる。"The door will tears us apart"といった風情かと,何気なくながめていたのに理由はない。電車がホームを離れると,こちらに残った男はやおらケータイを取り出し,メールをチェックしはじめた。
 当たり前の光景なのだろうけれど,こんな場面に違和感を感じることなく,それどころかそこに詩情をもつことができなければ,今どき,物語をまとめることはできないのだろう。



06月05日(金) 後出し  Status Weather晴れ

 世の中に嫌いなものは数あれど,後出しくらい嫌なものはない。



06月06日(土) 常夏の豚  Status Weather晴れ

 打ち切り? またトラブルかな。



06月07日(日) 常夏の豚 2  Status Weather晴れ

 前回は気づかなかったものの,「常夏の豚」の最後のくだりに「眠れる森のスパイ」がスポンと入り込んでいる。20年以上の小説だというのに,それなりに違和感なく。
 当時の文体,特に風景描写と会話は,そのディテールを忘れてしまっていても,目にするだけで,矢作俊彦のものだと判ってしまうほど,特別なものだったのだろう。
 東郷隆がいうように「あの人の小説は焼酎みたいな」ものかもしれない。

 で,この最終回,「チャイナマンズ・チャンス」に繋がっていそうな気配もあり,「傷だらけの天使」のディフォルマシオンのような感じもした。

 ただ,この2作品で用いられている,ずっと一人称で引っぱってきて,突然三人称のシーンが挟み込まれるのはどういう趣向だろう。もちろんそうして綴られた「チャイナマンズ・チャンス」6月号のクリス・アッカーマンのシーンはとてもよかったのだけれど。



06月10日(水) 常夏の豚 3  Status Weather晴れ

 で,最後が「檸檬」ならぬ「キャベツ」で締められるのはどうしたことだろう。矢作俊彦と梶井基次郎というのはあまり接点がないような。井伏鱒二なら,太宰より梶井の一言もあろうけれど。

 「NOW」20号に記されたリー・マーヴィンに関するエッセイをそのうち紹介します(以前,一度あげたデータはどこかへ行ってしまった)。



06月13日(土) モラリスト  Status Weather晴れ

 神保町や新井薬師のスナックに何度か連れていかれた。新井薬師のスナックではカラオケ付きで,彼に紹介されたイラストレータも一緒だった。スナック,カラオケというと,上から数えたほうが早い苦手なものであり,彼とでなければ付いていきはしなかっただろう。
 楽しい酒だった。お互いに論理的に話をたたんでいるつもりでも,素面でさえ苦手なのに,酒が入るものもだから,否定のための否定のような話になってしまうことしばしばだ。それでも決して決裂することがなかったのは,これまたお互い,どんなに酔っぱらっても加減を測りながら懐に入り込むバランス感覚だけは失うことがなかったからだろう。仕事を一緒にする機会はなかったこの時期,振り返るともっとも頻繁に彼と飲んでいた。

 ところが。
 風向きが変わったのはバブルが弾けてしばらく経った頃からだった。



06月16日(火) 三世  Status Weather晴れ

 モンキー・パンチが描いていない『ルパン三世』の漫画のなか,原案だったか何かをダディ・グースとクレジットされた回があって,以前,古本屋で単行本を捲っていたとき,確かにその回をみた記憶がある。最近,10何巻まで捲ったものの,とうとう探し出せなかった。



06月18日(木) 夜翔ぶ女  Status Weather晴れ

 澁澤龍彦だっただろうか,中井英夫が『夜翔ぶ女』に収載された短編のようなものを,もう少し書いてくれていたらと記された文章を読んだ記憶がある。
 先日,創元ライブラリ中井英夫全集5「夕映少年」を読み返していて,確かにこの手の小説をもう少し読みたかったと。

 最近,短編を読む機会が少ないのが何だかとてもつまらないのだ。矢作俊彦が再び,短編小説を書いてくれたなら,と。繰り返すようだけれど「桜坂ムーンドライヴ」はよかった。



06月22日(月) 105円  Status Weather晴れ

 ソフトカバー版の『憂い顔の童子』と『トンデモ本』シリーズの何作目かを,同じく105円棚から引っぱり出した。



06月26日(金) 生誕200年  Status Weather晴れ

 「ミステリ・マガジン」8月号を手に入れた。ここでも中井英夫が記すように,ユーモア小説家としてのポーの二流,三流性について誰か書いていないだろうかとページを捲ったものの,特集に「幻想と怪奇」と冠されているので,さらりと眺めておしまいにした。「犬なら普通のこと」は快調で,でもどうしてもオリジナルであったであろう,横浜を舞台にした物語に思いを馳せてしまう。
 樋口有介のインタビューが掲載されていて,『ぼくと,ぼくらの夏』だけは『バタアシ金魚』に引惹かれてしまうのに共通して,いつか読み直そうと思うものの,後の作品は再読できないことを思い出した。
 と,今日の日記に陥ってしまう。



06月28日(日) 重箱  Status Weather晴れ

 徹の重箱読みの非道さといったらなかった。「そんな読み方ないだろう」と思うものばかりで,今となってはどんなに無茶な読み方をしたかすっかり忘れてしまったが,唯一覚えているのが「もちづきぼうたろう」。ぼうたろう??? それは「バタアシ金魚」の作者のことを指しているだろうか? ぼうたろう? どうして??

 先日,新作『東京怪童』を買い求めたが,著者名は望月ミネタロウになっていて,もしかして徹以外にも「ぼうたろう」と読むものが世の中にはいたのかもしれないと感じた。
 『東京怪童』はまだ,どんな物語になるのか判らない。



06月29日(月) ときどき  Status Weather晴れ

 プールに入る準備運動を軽くしているとき,足をつってしまい,そのまま更衣室へ戻る人をみることがある。もちろん再びやってきはしない。2,3か月に一人はみるのだから,意外といるのかもしれない。



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