2010年6月
06月01日(火) 真夜中へもう一歩 2 |
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文庫化された際は気づかなかったけれど,こんなに手が入っているとは思わなかった。全体,とても物語の輪郭がクリアになったような感じがする。ただ,特徴的だった言葉遣いがならされていたり,前回,ふれた箇所のように単行本のほうがよかったところは残っているのだけれど。 |
06月05日(土) 傑 |
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1980年代後半から,複雑な出自をもつ「傑」を目を通したルポルタージュとでも言い得る小説がいくつか発表されたものの,当時,単行本の形にまとまったものは少なかった。「東京カウボーイ」を除くと,大きく形を変えた『ららら科學の子』くらいのものだろうか。 連載時,「仁義」は傑に一人称による小説だったし,「犬には普通のこと」の後半に登場する傑は,『天使扼殺者』よろしく異邦人が闊歩するパリでは違和感なしに存在した。 「あとは沈黙の犬」の第一回で,「BUZZ」の連載分のかなりは再構成された。「犬には普通のこと」の後半は「フィルムノワール」で香港に場所を移して,こちらもほぼトレースし終えた。どちらも今後3回くらいでどうまとまるか決まりそう。「チャイナマンズ・チャンス」は前半を捨ててしまい,「眠れる森のスパイ」をまとめ直した一作と位置づけてよいのではないだろうか。 いずれにしても,中段したままの小説を完成したものとして読めるのは楽しみだ。 少なくとも「百愁のキャプテン」と「常夏の豚」は連載終了したのだから,別のものに換骨奪胎などせずによいと思うのだけど(「ウリシス911」や「エンジン」だってそうだ)。 |
06月07日(月) と |
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いうようなこと書いていたら,「フィルムノワール」の話はまったく違う方向へ突入。ワイズクラックを放る二村は,ホームグラウンドに帰ってきたかのようにいきいきとしている。 |
06月25日(金) 東京カウボーイ |
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「あとは沈黙の犬」第2回は,「東京カウボーイ」に突入。「ウリシス911」よりは,元々,傑の話だけに自然に読み進めたところ,突如,同じ物語を違う登場人物が演じはじめる。さて,どうなることやら。 「仁義」連載のときから感じたのは,とにかくこの話は時制がややこしいので,少し目を離すと,どのときのことなのか追いつけなくなる。 それにしても早川書房の校正は非道いな。第1回もいくつかあったけど,内臓と内蔵の誤変換くらいチェックしなければ,何読んでいるんだって怒鳴られてもしかたない。 |
06月27日(日) テクニック |
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一時期,「ロッキンオン」を購読していた身としては,ロックが自分にとっての何であるか,テクニック以外で表現したいという思いを常にポケットに忍ばせていることは間違いない。80年代前半の数年,私を惹き付けてやまなかったロックは,決して演奏能力に比例して測ることができるような質からではなかった。 アカウントを取ってしまった手前,ときどきコメント付き動画投稿サイトで好きなバンドの動画を見ることがある。テクニック以外に語ることないのかと叫びたくなるようなコメントの嵐に,なんだか大嫌いだった70年代後半のロック雑誌を見る思いがする。 |
06月28日(月) 一字違い |
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「ミステリ・マガジン」8月号,連載それぞれの終わりは「次号へ続く」なのに,「あとは沈黙の犬」だけ「次回に続く」。 こんなところで予防線引いて,いったい何になるのなるのだろう。仮に「次回に続かない」連載があるのなら,それはそれで凄い。 |
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