矢作俊彦の『リンゴォ・キッドの休日』の著者近影について,撮影した横木安良夫がスタジオ・ボイスのインタビューで次のように語っている。(写真は後日アップ予定)。

――ちょっと話変えましょう。矢作さんの『リンゴォ・キッドの休日』(早川書房)の裏表紙の“著者近影”,横木さんですよね。なんか,イヤシクなれないヤクザみたいなの。
横木 彼はさあ,何か演じたいものがあるわけだよね。ああいうふうに撮ってほしいんだよ。『マイク・ハマーへ伝言』の写真はさ,なんか変なお坊っちゃんみたいに撮れてんでしょ?
――評判のやつ。老舗の若旦那みたいな。
横木 な。だからさ,俺そうじゃないように撮ったんだよ。
一度さ,矢作が二年前かな,すごいいいこと言ってたのね。つまりさ,日本の写真家は頭悪いって言うの。利巧なのは篠山と荒木だけだって。
いまの時代,写真と小説を比べると,写真のほうがメディアとしてはるかに凄い。小説なんてさ,書くのも読むのも時間かかるし,メンドくさいでしょ。ところが写真は,一人称で何でもできて,見るほうも一瞬で分かる,カメラマンは世の中全部,自分を中心に支配できちゃう。ところがそのことをカメラマンは意識していないっていうわけ。小説も写真も一緒だとか言うけど,実際カメラマンで「一緒だ」ってデカい顔してんのは篠山,荒木ぐらいだしね。それはカメラマンの自覚が足らないんだ! って矢作が言うわけ。

インタビュー:横木安良夫,永遠のイタチごっこを繰り返す美女とカメラマンの「心だより」,スタジオ・ボイス,Vol.95,p.73,1983.