• 初出「NOW」No.20号,文化出版局,1973.

gang_1gang_2彼らは殆どの場合寡黙だ。代って,掌の拳銃がたいそう饒舌に,己れを語る。『胸のハジキが黙っちゃいねェ。殺(や)りてェ,殺りてェと夜泣きする』――戯 画化された彼らはこうも言う。大型拳銃を下げた左脇下は,重みを定着させる。それは彼らの法を,歌を,方向を決定する。『倫理とは未来の美学である』―― こんな,なまいきを言った拳銃もある。
その中にあって,リー・マーヴィンは,拳銃と少し間をあけているようだ。彼は決して本来的な道具を忘れない。殺しを副次的な要素とした武器の多い時代に,その様はうつくしいではないか。