意味

画家か音楽家になりたいと私は思った。色や音には意味の泥川の向う岸にある瞬間の,不動の,不銹の純粋さがあるように私には感じられたのである。文字はどうにもあいまいで,やくざで,舌足らずで猥雑なように思えてならなかった。
開高健『食後の花束』,p.25,角川文庫,1985.

シミュレーション

シンセサイザーが身近な楽器の一部になりはじめたころ,雨後のたけのこのように,クラシックをシミュレートした音色とアレンジでできあがったレコードがリリースされた。生活の糧としてその一部に加担した平沢進はそうしたレコードを“労多くて益少なし”と切り捨てた。つまりは生のシミュレートをするならば,生で演奏したほうが手っ取り早いというわけだ。

と,昨今のデジタルブックのテクニカルな面を眺めると,シンセサイザーで生音をシミュレートしようと奮闘していた当時を思い出し,なんだかくたびれてくる。

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