コンパ

 コンパと聞いて,まず思い浮かぶのは,しりあがり寿の「コンパさん」。次に「江古田コンパ」のばばぁだ。

 このばばぁには,赤子の手をひねられるがごとく潰された。

 子どもが生まれた翌日,友人2人とささやかな祝杯をあげようと江古田に降り立った。ひとりが「前から入りたかったところがあるんだ」といって,指差す先に「江古田コンパ」の看板が。
 「コンパ……さん? かぁ。カトちゃんですよ?」
 だから,そうではないのだが……。

 「最近のバァは腕もったバーテンダーいないのよね。うちの○○さんは違うから。資格もってるから,味が全然違うわよ。何飲むの,こちら強そうだから,アースクエイクあたり どう? こっちはアラスカにしなさいよ」
 と,ばばぁは夢野久作の小説のように,饒舌にどんどん決めてしまう。腰を振りながら「あーすくえーく」なんて,どういう神経しているんだ? 1杯目から悪酔いしそうだ。

 気がつくとカウンターの前にやってきて,一振りしては,いつの間にか消える。そのタイミングに,度を超して飲み過ぎた。

 遂にはカウンターにうつ伏せてしまっていた。
 目の前には食べ残した焼きうどんや,つまみの姿が。そういえば,バーテンの○○さん,じきじきに焼うどんもってきてくれてたなぁ。ありがたいことだ。酔っ払いの思考速度で妙な感謝をして,再びうつ伏せた。

 アルコールが腰にきて,頭から潰れるという経験は,以後,ない。よく家まで辿り着いたものだ。

 翌日,鬼のようなばばぁのことを思い出した。われわれのカクテルをすべて振ったのは,あのばばぁだった。「資格をもったバーテン」とか「腕がどうの」とかいう話はどこへいってしまったのだろう。

 こ奴,百魔のひとりにちがいない。
 乾杯,もとい完敗だ。(これはちょっと,マズいな)

チャーギョウ

 喬史は,みそラーメンが好きだと公言して憚らなかったが,学生生活が終わるまで,学食以外で彼がみそラーメンを食する姿を見たことはなかった。
 「旨いラーメン屋じゃなければ食べない」のだそうだ。
 「どうやって,旨いかどうか判断するんだ?」
 事ある毎にわれわれは尋ねた。
 「花板が……」
 だから,ラーメン屋に花板はいないと思うのだが(最近は,なんだか勘違いしているのもいるようだけど)。
 一生,みそラーメンを食べられないのではと危惧,することはない。学食のみそラーメンが旨いとなぜ判ったのか?
 卵が先か鶏が先か……。

 吉野家で「白(ごはん),ぎょく(玉子)」なんて平気で言うわ,カネのない時は「夕飯,タバコ3本」。マージャンで勝った朝は,徹夜明けにステーキ弁当。こ奴の胃腸にだけはなりたくなかった。

 食事のときも,ばか話ばかりだ。意外と旨いラーメン屋で,(そ奴はここでも,みそラーメンは頼まないが)注文するのはラーメンと餃子。
 「こりゃ,ラーギョウ」だな。
 「おれは,チャーギョウ」
 「こ奴,いいところ突くな」
 どこがいいところか判らないが。
 「おれ,チャーラー」
 「そりゃ,食い過ぎだ」
 不毛な会話を何度繰り返したことだろう。

ロックバンド

 マッドネスについて書きはじめるとなると,どれだけページがあっても尽くせないほどの思い出がある。
 とにかく下のHPを御覧いただきたい。
 (と,語りかけるようなものではないが)

 http://www.madness.co.uk/

 実にバンドのイメージ通りつくられていることに驚いた。
 もう,クリックするごとに「おーマッドネスのセンスだ!」と絶句。
 こ奴ら,“OUR HOUSE”のビデオクリップは,ガンビーズの格好で,手を振って終わるのだ。

 またクリックすると「おい,なんで部屋のポスター,ワンダーウーマンなんだ」と突っ込みたくなる。そう,昔,クラスに一人はミドルネームに「ワンダー」がつく奴がいたものだ。日曜日の午前中,遊びに誘うと,「用事があるから」といって,妙によそよそしい。どうやら,こっそりワンダーウーマンを観ているようだと噂がたつ。翌日から,あだなは,もう「ワンダー○○」だ。
 ああ,マッドネスから遠く離れて……。

 ひとつだけいうと,5人以上メンバーがいるバンドで,全員が作詞作曲し,バンドとしてのクオリティを維持できる奇跡を,マッドネス以外にみせてくれたバンドはいない。さらにいえば,オリジナルメンバー(一時,ひとり抜けたものの)を維持していることも加えて,本当に,理想のロックバンドであり続けている。

 このHPに,「シティ・ロード」の表紙を飾ったときの写真があった。宝探しのようだが。
 本当に,いや,まったく本当に。

Newパンチザウルス

 昭和の終わり,友人たちが揃って同じ雑誌を買っていたからといって,怪しげな宗教団体に気触れたわけではない。偶然かどうかは判らないが,その雑誌には好みの共通項が網羅されていたのだ。
 「平凡パンチ」の後に登場した「Newパンチザウルス」だ。

 山上たつひこと,どおくまんが同じ雑誌に漫画を描くことはあっても,そこに,みうらじゅんと岡崎京子が加わると,それまでは一冊の雑誌では足りなかった。

 「Newパンチザウルス」により,われわれは週一回,至福の時間を過ごすことができた。(かなり安上がり)

 一冊も捨てた覚えはないので,たぶん全冊揃うと思う。

 ところで,およそ他人の趣味にすり寄ることをしない友人たちの間で,唯一,面白い漫画としてコンセンサスが得られたのは杉作J太郎の「ヘイ! ワイルドターキーメン」か「卒業―さらば、ワイルドターキーメン」に載っていた「金の斧 銀の斧」のパロディだった。

 まぬけな学生が道ばたで,アイドル○○のグラビアが載った雑誌を拾う。人のいないところでゆっくり見ようと思い,池のほとり行くと,石に躓いて雑誌は池のなかへドボン。そこに池の精(じいさん)登場し,「お前が落とした雑誌はどれじゃ」

  1.アイドル○○のグラビアの載った雑誌

  2.アイドル△△のグラビアが載った雑誌

  3.アイドル◇◇のヌード写真集

 「はい,3です」

 「バカモン!◇◇は,まだ脱いでおらん。しっかり勉強しろ!」

 ほら,暗記している。
 こんなので,メモリー無駄にしてるようだ。

インド人におごってもらう

 久々に,コトナのころみたいな話。

 昼は,カレー屋にいった。
 数か月前にできたカウンターだけの店だ。インド人と,自己開発セミナーから抜けられなかった宮台真司のような店員コンビのいい味が気に入っていたこともあるが,カレーの味もなかなか。月数回は利用していた。

 今日はいずれも店にはおらず,インド人ひとりが仕切っていた。混んでいるときもあったのに先客は2名。しばらくすると私だけになった。インドポップスと空調の音が空しく響く。マサラカレーを詰め込みながら,片手で「マックピープル」を捲る。

 食事を終えようとするころ,「チャイ飲みますか? 美味しいよ」
 カウンター越しに聞かれた。どうもおごってくれるらしい。インド人におごられる。あまりの非日常性にあわててしまい,笑顔で応えてしまった。
 よほど貧相をしていたのだろうか。それにしてもインド人におごられる日がくるとは……。
 チャイを待つ間,何か話をしなければ,プレッシャーに押し潰されそうになりながら出た言葉が「どこかで店やってたんですか?」
 「11年前にやってたけどね。今も,本当は車の仕事」
 車の仕事って,いったい何だ??? カレー店のほうが数万倍似合っているぞ。とはいえず「ほお」と曖昧に相づちを打つ。
 「夜は混んでるんだけど,昼のお客さん少なくなって,みんなで相談してる。出すの遅いでしょ」
 確かに,いつもいる料理人は,ひたすら一人前のカレーが入った鍋を,魯山人の納豆のように,納得いくまでかき混ぜていた。遅いかと問われれば,そうも見えるが,あの仕草さえ見なければ,そんなことはない。
 今日は早かった。しかし,こ奴はかき混ぜない。あれがないと,どうも食った気がしないから不思議だ。

 とてつもなく旨いチャイを飲みながら,経営コンサルタントのように相談にのった。人を見る目がないことだけは確かだ。私の自慢は,これまで営業経験どころか,ものを売るセンスはゼロだということなのだから。

 その場ではいわなかったが,メニューに載っているビーフカレーと牛タンカレー,旨いのだろうが,あれは止めたほうがいいと思う。牛食うインド人ってね,ちょっと……。

 この店。世界飯店の隣とだけ記しておく。

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