コンパと聞いて,まず思い浮かぶのは,しりあがり寿の「コンパさん」。次に「江古田コンパ」のばばぁだ。
このばばぁには,赤子の手をひねられるがごとく潰された。
子どもが生まれた翌日,友人2人とささやかな祝杯をあげようと江古田に降り立った。ひとりが「前から入りたかったところがあるんだ」といって,指差す先に「江古田コンパ」の看板が。
「コンパ……さん? かぁ。カトちゃんですよ?」
だから,そうではないのだが……。
「最近のバァは腕もったバーテンダーいないのよね。うちの○○さんは違うから。資格もってるから,味が全然違うわよ。何飲むの,こちら強そうだから,アースクエイクあたり どう? こっちはアラスカにしなさいよ」
と,ばばぁは夢野久作の小説のように,饒舌にどんどん決めてしまう。腰を振りながら「あーすくえーく」なんて,どういう神経しているんだ? 1杯目から悪酔いしそうだ。
気がつくとカウンターの前にやってきて,一振りしては,いつの間にか消える。そのタイミングに,度を超して飲み過ぎた。
遂にはカウンターにうつ伏せてしまっていた。
目の前には食べ残した焼きうどんや,つまみの姿が。そういえば,バーテンの○○さん,じきじきに焼うどんもってきてくれてたなぁ。ありがたいことだ。酔っ払いの思考速度で妙な感謝をして,再びうつ伏せた。
アルコールが腰にきて,頭から潰れるという経験は,以後,ない。よく家まで辿り着いたものだ。
翌日,鬼のようなばばぁのことを思い出した。われわれのカクテルをすべて振ったのは,あのばばぁだった。「資格をもったバーテン」とか「腕がどうの」とかいう話はどこへいってしまったのだろう。
こ奴,百魔のひとりにちがいない。
乾杯,もとい完敗だ。(これはちょっと,マズいな)