エレファント・トークは22年前

 文学界新人賞作のタイトルが「イッツ・オンリー・トーク」。
 立ち読みで,ページを捲っていくと,エイドリアン・ブリューとロバート・フリップの名が見つかった。最終章のタイトルが「クリムゾン」。

 これまでも,小説でクリムゾンの名を目にすることはあったものの,女性の作家によるものは(たぶん)森真沙子以来,2人目の経験だ。80年代のクリムゾンへの言及としては初めてだと思う。
 にしても80年代。もはや20年前の曲を,なぜ,新人作家が。花村萬月の小説には,「ブック・オブ・サタディ」のことを語る10代の女性が登場し,それを読んだ友人は思わず吹き出した。
 「いくらなんでも,いないだろう」

 たとえば,ロベール・ブリアットの『ポール・ボウルズ伝』には「シェルタリング・スカイ」への言及があり,ちゃんとクリムゾンの名が示されている(ポウルズ本人が「面白い解釈だ」といったとか)。ついでにポリスの「サハラでお茶を」も登場する。(こちらは散々)
 そろそろ,そんな流れからクリムゾンを取り入れる小説家が現れると面白いのだが。

 ところで,この小説が掲載された「文學界」には,ベストセラー「キャッチャー・イン・ザ・ライ」(おっと,ウォッチャー・オブ・ザ・スカイと打ってしま いそうになった)が小特集で取り上げられている。翻訳家のノートに加えて,鼎談などもあり,ついでに捲っていると,トルーマン・カポーティの名が何回か登場した。
 “Other Voices, Other Rooms”のあの少年のことではないが,始まりはカポーティなのだろうか。

 大昔,三岸せいこという漫画家がいた。萩尾望都と大島弓子に映画テイストをプラスしたような作風(もろ,フェリーニという漫画もあったと記憶している)。彼女の作品のあとがきで,カポーティについて触れられていたことを(「名探偵登場」)思い出す。

「ハウス」と「恐怖 奇形人間」の共通点(映画ではなく) 

 以前の文芸座での経験。
 オールナイト(とはいえ,1回通すだけなら,外はまだ午前2時)で,石井輝男の例の映画と,恐怖少女漫画を映画化したもの,あと1本は何だったろう,とにかく3本立てだったと思う。
 例の映画は大井武蔵野館で数回観ていたので,「面白いんだぜ」と,友人たちを誘い,ツアーを組んだのだ。
 例の映画については,はじめて観たときから,「これは乱歩じゃなくて,しいていえば“久作+キイハンター”じゃないか」と思いはしたものの,ショッキングではあった。ただ,百歩譲っても「孤島の鬼」ではないことだけは確かだ。(人間椅子ではあるかも知れない)
 友人たちも同感だったようで,映画の話云々というよりは,終始,怪優・小池朝雄(刑事コロンボの声)に圧倒されたと,ため息をついた。それだけだ。

 さて,徹は大林ファンだったが(干される原因となった「金田一耕助の冒険」のことを嬉々として話したものだ),「大林のファン」のことは死ぬほど嫌っていた。
「『ハウス』観てると,あ奴ら,拍手やがるんだ。気持ち悪いったらありゃしない。『ゴジラ』でも,そういう奴が多いんだよな」日頃から悪態を吐いていた。

 だから,この夜,例の映画のラスト,ドリフじゃあるまいし「首チョンパ」で終わる映画があるか,とは衆目の一致する意見だと思うが,開場で拍手が起きたとき,
「ケッ」
 隣から冷ややかな舌打ちが聞こえた。

 なぜか,その夜,どこに流れて行ったのかは記憶にない。たぶん雀荘で朝まで卓を囲んでいたのだろう。

 しばらく後,再び文芸座に行ったとき,まわりが歓楽街だったことに唖然とした。

アジャーニ

 この日記のなかでは2番目に新しい話。

 家内と30代になったばかりの同僚(女性,映画好き)が,「誰がきれいな女優だと思うか」となった。
 「イザベル・アジャーニってきれいよね」と言ったところ,どうも話が通じない。イザベル・アジャーニを知らないらしいと気づいた。
 「ほら,あの映画」と言ったはいいが,彼女も題名が出てこない。
 そんなものだろうか。

 確かに代表作と言ったとき,「アデルの恋の物語」じゃ古すぎる。「王妃マルゴ」は,いまひとつ当たらなかったな。「カミーユ・クローデル」は,当時は話題になったと記憶しているが,なぜか不思議なことに「シラノ・ド・ベルジュラック」と重なってしまい,なおかつ 「シラノ」のサントラが良かったこともあり,インパクトが弱い。
 「サブウェイ」は漫画みたいな話で,フランスのロックは,なぜドラムにフランジャーがかかったような音になるのかを再認識したサントラがマイナス。
 結局,残るのは「イシュタール」。
 でも「イシュタール」が代表作じゃ,ちょっとね。かなり好きな映画ではあるが,それはスクリーンの外の話の面白さ(ウォーレン・ビーティの破産! あんな映画に金注ぎ込むとは。でも,ミサイルが飛び交うから面白いのだが)
 「カルテット」「ブロンテ姉妹」,「可愛いだけじゃダメかしら」(これは大槻ケンジがタイトルをバロったな),イブ・モンタンが親爺役を演じた映画はなんといったろう?
 「ボゼッション」,北斎漫画じゃあるまいし。(といいながら思い出すと,嫌いではないことに気づいた)
 ああ,数知れず観たのに,そういえば代表作がない。
 「殺意の夏」。挑発的な口の半開きはマリリン・モンローの特許ではなかったか。

 とはいえ,数ある映画女優のなかで,活躍中に「エイズで死去」のニュースが飛び交ったのは彼女をおいていないだろう。自慢にもならない。

デ・ジャ・ヴ 

 といっても,モンティ・パイソンの有名なネタのことではない。
 どこかで聞いたことがあるようなというニュアンスだ。

 数年前,「桜坂」という唄がテレビから聞こえてきたとき,「高橋幸宏?」と思った者がどれほどいたことだろう。(近くの数名からも,同様の声が聞こえてきた)「愛は強い」の続編のようで,いっそのこと,ユキヒロ氏にカバーしてもらいたいと感じた。
 矢井田瞳の「ダーリンなんたら」という唄を聞いたときも,「アンディー・パートリッジにボーカルとギターやらせたいな(いくらなんでも無理だろう。でも聞いてみたい)」
 しゃくりあげるようなカッティングと,テンションのとりかたはXTCだもの。
 思いつくまま,まず2曲。
 他にもあることだろう。

 ところで,ジャムの“Carnation”を口ずさむと,いつの間にかマイク・オールドフィールドの“Talk about your life”になってしまうのは私だけだろうか。

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