カテゴリー: 小説
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理彦に頼まれてスコラ・ジプシーの曲に歌詞をつけたことがある。出来上がった歌詞を持って,当時彼らが練習場にしていた立川のスタジオへ顔を出したときのことだ。打ち合わせを一通り終え,受付カウンター前の古びたソファーで音数を調...
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七月も半ばだというのに低く垂れ込めた雲が空を覆っている。天気予報は“梅雨明けは平年より遅れるでしょう”と,今年何度目かのアナウンスを繰り返して いた。微かに顔を覗かせる夏の気配は,晴れやかな女性の二の腕と,行くあてのな...
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気まずい沈黙が,無粋なBGMを頭のなかから追い出した。 「お知り合いですか?」 男が尋ねる。柑橘系のヘア・トニックが匂い,黒のプレーントゥが一歩踏み出した。 「大学のときに。よく知っていますよ,あ奴のことは」 「面白い...