初めてキング・クリムゾンのライブをみたのは1981年12月7日9日(訂正。9日のチケットが出てきた。それにしてもどうして7日と思い込んでいたのだろう),渋谷公会堂だった。34年前の今日のこと。当時は北村昌士が書いた本にはまっていて,目の前のバンドのまったく違う印象が面白かった。それが恰好よかった。渋谷公会堂に着くまえに,御茶ノ水のキニーに寄りブートレックを手に入れたので,セットリストは把握していたけれど,全体にメタリックな響きが新鮮だった。
1984年4月のライブは,五反田のゆうぽうとで前から3列目で見た。アンコールの“ディシプリン”で総立ちになったのは時代のせいだろう。当時,矢作俊彦の「神様のピンチヒッター」をパクッた小説を書いたことがある。それは精神病院に入院した彼女を殺しに行く学生の話で,主人公はこの日,五反田でフリップを見た帰りに地下鉄で精神病院へ出かける。もちろん,完成しなかったのだけれど。
1995年のライブも見に出かけたし,2000年のミレニアムクリムゾンは渋谷公会堂で見たはずだ。ただ,このときのライブで初めてテクノロジーに追われている感じを受けた。たとえばそれは“フラクチャード”のフェイドインをフットペダルやボリュームコントロールではなくて,PAでレバー操作しているように聴こえてきたり(実際どうだったのかわからないけれど),もちろんそれは理由にもならないけれど,何だか気持ちが離れてしまった。2003年のライブには出かけなかった。
今回のライブは,初めてフリップがレイドバックしたかのような先入観が強く,初手から出かける予定はなかった。それが週末,ネットをながめていると定価より安く,それも前から2列目のチケットが目にとまり,即決で購入してしまった次第。
そんなわけで,北村昌士本とともに,私も初めてレイドバックした気分を携えてオーチャードホールに出かけた。何か新しい音を聞こうとは思うことなく。
あらさがしをすればいくつか挙げることはできる。“エピタフのボーカルメロディをきちんと把握していない,ギターのジャラーンのタイミングを外し,止まってしまうんじゃないかと思ったジャッコの不安定さとか,“宮殿”で1969年のライブのようにメロトロンの裏に無理矢理ギターソロをぶち込むような攻撃的な演奏がみられなかったフリップ,もう少し曲に合ったスネアのチューニングをしてほしかったギャヴィン・ハリソン,“太陽と戦慄パート2”でリフのタイミングをとちったフリップの苦笑いが見られたのは何だかホッとした。“スターレス”の後半のジャコのギターが不安定で編曲したのかと思ったり,そりゃ30年以上,数え切れないほど聞いた曲を,ほとんどアレンジ変えずに演奏されると気になるところが出てくるのは仕方ない。にもかかわらず素敵なライブと感じたのは結局,フリップはミレニアムクリムゾンの落とし前をつけたかったのだなあと思ったからだ。そして見事に落とし前をつけていた印象を受けた。
だから,そのために“スキッツォイドマン”“エピタフ”“宮殿”“冷たい街の情景”“平和-終章”“レターズ”“LTIAパート1”“イージーマネー”“トーキングドラム”“LTIAパート2”“スターレス”といった曲が召還されたのだとしたら,それはよろこばしいことなのだろうと思う。
およそ30年間4回見たクリムゾンのライブのなかで今日演奏された曲は4曲くらい。たぶん,フリップがギターを弾く姿を見るのは最後なのだろうなと,やたら感傷的な気分で帰ってきた。
見渡すと,観客は平均年齢50歳・男性率9割越え。ステージ上からメンバーが目にした光景を想像すると笑ってしまいそうになった。
それにしてもキング・クリムゾンとThe Pop Groupの来日とが被っているなんて,今日が34年前であっても不思議ではない気分だ。
セットリスト
- Larks’ Tongues In Aspic Part I
- Pictures Of A City
- Epitaph
- Radical Action (To Unseat The Hold Of Monkey Mind) I
- Meltdown
- Radical Action (To Unseat The Hold Of Monkey Mind) II
- Level Five
- Peace – An Ending
- Hell Hounds Of Krim
- The ConstruKction Of Light
- The Letters
- Banshee Legs Bell Hassle
- Easy Money
- The Talking Drum
- Larks’ Tongues In Aspic Part II
- Starless
- Devil Dogs Of Tessellation Row
- In The Court Of The Crimson King
- 21st Century Schizoid Man