かぜ

市販薬で,これまでもふつうに飲んでいたかぜ薬が,今回はどうしたわけか飲むと眠たくなってしかたがない。朝から眠気とだるさで体調が非道い。午前中は休むことにした。10時半過ぎにどうにか起きて,暖めた浴室でとりあえず,汚れた髪とからだを洗う。

午後から出社し,校正などを済ませる。17時過ぎに校正を届けに永福町に行く。この時間,車内は混雑する。そのまま吉祥寺経由で帰ることにした。バサラブックスの200円3冊の箱からピックアップ。家に何か買って帰ろうと,アトレからサンロードあたりをぐるぐるしたものの,これといって目ぼしいものがない。結局,2階改札付近に出店中のシフォンケーキ店で買った。

中野で降り,新井薬師前まで歩く。途中,古本案内処で『寒村自伝』(上下),『至福千年』を均一棚から,店内で別冊宝島の『マンガ論争!』を見つけ買う。

体調がすぐれないのに,こんなに歩くのではなかったと後悔半分で,新井薬師前に着く。家に帰り夕飯をとって早めに眠る。

週末までに体調を回復しなければ,という前にみちくさ市の準備に手がついていない。土曜日頼みだな。

三代

隣に住んでた人が東京で修業して帰ってきたんですよ。「跡取り息子以外が採用しないところだけれど,今度北海道にくるというから紹介しようか」って言われたら,その気になってしまって。高校2年のときに店長が来たんです。それで挨拶に行って,修業したいとお願いしました。開口一番「うちは跡取り息子以外とらない」と。私のところは親,サラリーマンですから。「でも,どうしても修業したいなら,3年の終わりに連絡してきなさい」。私は早く高校3年が終わらないかな,って気分ですよ。

それで3年の秋にもう一度,お願いの連絡したところ了解してくれて。3月に飛行機で羽田に着いたんです。両親,弟もこんな機会ないからといって着いてきた。そうしたら迎えにきた店長の車がベンツ。へぇ,床屋でベンツに乗れるのかと思いました。

寮は二人一部屋で6人くらいいたかな。それ以外にも自宅から通ってくる奴もいて,そのなかで一番できる奴は跡取り息子でしたね。こ奴が店を任されるのかなぁって思っていたら,3か月で夜逃げ。実家に連絡したら帰っているというから,店長のベンツ運転していきましたよ。母親が出てきて,「子どもは私が教えますので,申し訳ないけれど勘弁してほしい」,本人は結局,出てこなかった。店長は厳しい人だったら,激怒するかなと思っていたら「わかりました」,私に向かって「帰るぞ」。不思議だったので帰りの車中で「どうして連れて帰ってこなかったんですか」と尋ねたら,「ああいう親はダメだ。連れて帰ってもまた逃げる」。そういうこと,経験からわかってたんですね。

修業は大変だったけれど同期が実家を継ぐために1人帰り,2人帰り。いちばんできる奴が帰りそうだったので,奴より残っていたらまずいと思って先に辞めました。

4年前,地元に親を残してかみさんと二人で東京に出てきたんですが,さすがに使ってくれとはいえず。でも挨拶はしておかないとなと思って,今の店長の代になっていましたけれど,伺ったら,「どうするんだ」と聞かれて「これから探します」と言ったら,「ちょうど人が足りないので,またやってくれないか」と言われて驚きましたよ。この世界,なかなか出戻りってありませんから。

社長になって店にほとんど立ちませんし,今の店長は修業から続けてきた人ですんで,三代続いた床屋もどんどん変わっていきますよ。若いスタッフも多いでしょう。私みたいのは,それでなくてもめずらしい。

という話を聴いた。

かぜ気味

寒くなったり暑くなったりが続くためだろうか。かぜ気味が続く。

土曜日は一度起きて,また少し眠る。昼は家内と中井のKURIKURIに行く。買い物に行く家内とわかれ,新井薬師前の文林堂書店に。店頭に並んでいたバルデュス『砲火』(上下,角川書店)を買い,高田馬場まで戻る。恵比寿で降り,歩いて北里大学まで。打ち合わせを済ませて,新宿から東中野に行き,ブックオフで古本を買う。山手通り沿いの中華料理店で夕飯をとり,家に戻った。

日曜日は,9時過ぎに家を出た。途中で床屋の予約するため電話したところ,昼までいっぱいだという。新大塚のグループ店に連絡したところ,11時で予約がとれた。新大塚駅前の江戸深川珈琲本舗 新大塚店でモーニングをとる。床屋を終え,高田馬場で家内と待ち合わせ墓参りに。西船橋で昼食,船橋でバスを待ち,馬込沢まで行く。戻ってきて船橋で休憩。買い物をして娘と待ち合わせている高田馬場に戻る。夕飯をとり,家に戻って「シン・ゴジラ」を見た。

結城昌治『あるフィルムの背景』を読み進めている。後味の悪い話ばかりだけれど,巧いなあと思う。

花粉症

春先にすすめられた花粉症の舌下免疫療法をはじめてみようと思い,会社帰りに駅前のクリニックに行った。

30代~40代前半の医師が数名いて,かなりていねいに診察,説明を受けるので,このところ利用している。滞りなく説明が終わり,採血のために待合室に少しだけ戻る。呼び出しを受けて処置室に入り利き手の反対側というので右手を出す。なかなかうまく針が入らないようで,結局,一度刺した針を抜かれ,利き手で再度とられた。ただでさえ注射・採血は苦手なのに,ミスされるとめげてしまう。

駅前の書店で結城昌治の文庫を買おうと思い,新刊棚をチェックしたが見当たらない。結局,伊野尾書店に立ち寄り,結城昌治『あるフィルムの背景』(ちくま文庫),ついでに書肆侃侃房「ほんのひとさじ」をピックアップ。みちくさ市で,文庫だけのささやかな「結城昌治フェア」でもやろうかと思いつく。

新しくできたアジアン居酒屋で休憩。ハイボールと枝豆,シークカバブを頼む。枝豆の量が多くて,家に帰ってから夕飯を食べられるか心配になった。

花粉症の治療は3年かけて行ない,月3,000円程度だそうだ。発症してから毎年,きついので少しでも症状が和らぐとよいのだけれど。

話はある

午前中,西船橋での打ち合わせに直行する。改札で筋金入りのアマチュア・フォークミュージシャンと待ち合わせ,もちろん仕事の件で同行となる。打ち合わせを30分ほどで終えた後,駅の喫茶店で確認事項を詰めて別れた。昼近くになっていたため,北口へ降り,14号線沿いの居酒屋で軽めの昼食をとるつもりが,出てきたのはかなりボリュームのものだった。会社に戻り,仕事。久しぶりにブックオフを覗き,数百円分買って帰る。斎藤貴男の『ルポ 改憲潮流』(岩波新書)をずっと捲っている。

仕事柄,他人の話を聴く機会が少なくない。ほとんどが医療・福祉職との会話で,ただ聴いているだけではなく,長文かつ結論が最後の最後にくるような話し方で返してしまうことがときどきある。

自分から,あれこれ立ち入ったところを詮索して尋ねるのは苦手だ。たとえば3時間,話を聴いたとしてもその人の生い立ちひとつ知らないままということは,実のところめずらしくない。反対に,大変な生い立ちを話されても,その手の話に対するには,方程式の解のようなリアクションがあるのかもしれないと思いながらも,いつもと同じように聴くばかりだ。

少し前,福祉系の仕事をする女性から話を聴いた。仕事の話から始まったのに,いつの間にか,その人の日常について1時間くらい聴くことになってしまった。30歳くらいで,話に登場するのはお母さんと姉弟,そして彼氏さん。最近の若い女性が「彼氏さん」という言葉を使うことに気づいたのは少し前のことだ。「彼」でも「彼氏」でもなく「彼氏さん」。「彼氏さん」と発音されるたびに,微妙な距離感を感じてしまう。

地方に育ち,そこで働いている。小さい頃,お母さんから「林」のあたりは危ないので近づかないように,くりかえし言われたそうだ。田畑が途切れ,山までいかない手前に取り残された「林」。林が残っているあたりは閑散としている。だから事件が起きやすと,言われてみればそうなのだろうなと思う。

通学途中に事件に巻き込まれないよう,遠くの高校に通うことは許されなかった。そのことは語るのだけれど,だから入った高校はどこだ,という話にはならない。もちろん私は尋ねない。

話は日常に飛んで,ワンルーム暮らしで,趣味はセーラームーングッズとポケモングッズ集めだという。彼氏さんは,艦コレグッズに目がないそうだ。二人ともゲームも趣味。彼女はオンラインゲームは卒業したけれど,彼氏さんはオンラインゲームに課金している。そのことを彼女はあまりよく思っていない。

10年くらい前,彼女もオンラインゲームにはまっていて,ゲームを通しての友だちが何人かできた。ところがネットで中傷を受けたり,よい思い出ばかりではないようで,自分からはネットへの書き込みはしなくなり,いきおいオンラインゲームに時間を費やすこともほとんどなくなった。ときどきログインしてみると,当時の友だちが続けていて,1時間くらい相手をするのだそうだ。

ゲームに疎いので,どんなものかわからなかった。話を聴いているうちに,仮想ネットワーク上で遊ぶゲームみたいなものではないかと見当がついた。1時間くらい,洋服をつくって,それを友だちに「あげる」のだそうだ。

グッズを探すのはヤフオクで,ただ競り合わずに即決で買えるものにしか手を出さない。最近,足湯に使える折りたたみバケツを2つ買った。彼氏さんはフィギュアを買っては自分の部屋に置ききれなくなって彼女のワンルームにもってくるのだと。見た目はかわいいから玄関のスペースに飾らせてあげているようだ。

オンラインゲームと聞いて,星野源の話を振ったら,よく知らないという返事。お母さんはジャニーズファンでテレビをよく見ているから知っていると思うけれど,と。彼女はテレビをほとんど見ないのだそうだ。

いつ仕事の話に戻るか,少しひやひやしながら,こんなふうに1時間ほど話を聴いた。これはかなり特殊なケースで,いつもこんな調子で打ち合わせをするわけじゃない。

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