島田一男の捜査官シリーズは29冊あるようで(以前,wikiの島田一男のページが「調査官」となっていて,作品もそこそこしか登録されていなかったので,「調査官」になっている旨をつぶやいたところ,やけに精緻な情報に更新されていた),『広域捜査官』は8作目にあたる。ただし新書のデータというのは反映されづらいので,もしかするともう少し多いのかもしれない。
多いときには年間3冊が書き下ろしで刊行されている。長年の矢作俊彦ファンからすると,島田一男の刊行スピードはうらやましい。作品の質は玉石混交だけれども,島田一男の出自からして,満州が絡んでくる作品は面白い。年末に読んだ『トップ屋事件簿』シリーズは満州人脈が毎回登場し,事件の背景に絡むものだった。
もとはといえば,大陸書館からオンデマンドで刊行された『島田一男大陸小説集1~3』が面白く,満州との接点から読み返したところ,『広域調査官』を引っ張り出した。
マレーシアから国内までで起きたタンカー沈没事故と,その背景にあると思しき保険金詐取を探るFBI捜査官が殺される。共同調査の依頼を受けた警視庁は辺見警部を現地に送る。旧満州で警官をしていた辺見警部の父が記した当時の日記に登場する日本船舶振興会ではないもののそれふうの会の代表で,マレーシアにいる辺見のもとに,沖縄で殺されたその代表の捜査依頼は入る。沈没タンカーはすべて彼の会社が持つものだった。父の日記には,満州での脱走日本兵がつくった日本人村の存在が記されて,などなど。
以前記した『珊瑚礁殺人事件』の大ネタ,中国返還後の香港をそのままグアムに移転させる計画を背景にした事件も矢作俊彦に換骨奪胎してほしかったけれど,『広域調査官』のほうがふさわしいかもしれない。