「チケットぴあ」取り扱い店が,雨後のタケノコのように林立しはじめたころ,百歩譲っても,日本のロックを聞くことはないだろうと思えるパートのおばさんを通して,チケットを購入しなければならないことがあった。
彼女たちは,一度発券したのち,キャンセルは効かないことだけを強迫的に伝達されていたのか,オーダー後に確認すること,税務署並の執拗さに辟易とさせられた。
どんなところにも怠慢な人間はいる。
今は亡き,渋谷LIVE INNでのP-MODELのライブチケットを入手するために出かけた先にいたのがそんなパートのおばさんだった。
そ奴は,発券前の確認後,ていねいなことに1日前倒した日のチケットを寄越した。家に帰って気付いたが後の祭り。前日のライブは筋肉少女帯だった。
ひまだったので8階(だったと思う)にあったそのライブハウスまで足を運んだ。
その日の筋肉少女帯のライブは2部構成。第一部はケラ抜きの空手バカボン=「空手アホボン」が登場。冒頭の「アホボンと戦慄」。クリムゾンの「スターレス」のメロトロンのフレーズに,歌詞をつけて歌ったもの。情けないが,あのフレーズを聞くと条件反射のようにグッときてしまった。
第二部は通常のライブで,すでに「いくじなし」は圧倒的なインパクトだった。
もちろん翌日のP-MODELのライブにも出かけた。
その後,後楽園ホールで「子どもたちのCity」を見に行ったときは,反対にP-MODEL,筋肉少女帯という登場順だった。
筋肉少女帯との出会いは,パートのおばさんの怠慢さのお陰だということになる。石野卓球風にいうならば,あのおばさんは天使だったのかも知れない。