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データの整理に時間がかかり,21時近くに事務所を出た。ふつうの冬の一日。

『沈黙』に続けて,辻邦生の『安土往還記』が読みたくなった。

江戸川区に引っ越した時期に,あのあたりの空気の影響なのか,持っていた本の状態が軒並み悪くなった。染みが浮き出したりページがくっついてしまったり,紙がざらついたり,それは非道いものだった。数年後,親は千葉に引っ越した。すでに家庭をもっていたので置く場所に困り,選別しないまま私の本を一式預かってもらった。

千葉の実家を整理するときに,あらめて本を確認したところ,そのあまりの状態の悪さに辟易した。繰り返し読んだための状態の悪さならば,まったく気にならない。手元にある『どくとるマンボウ航海記』(角川文庫版)や『八十日間世界一周』(角川文庫版)は読み返しすぎて草臥れかた甚だしいけれど,手放す気になることはない。悲しいことに,そういう状態ではなかった。

そのとき,かなりの本を処分した。著作集を含め,辻邦生の一連の本も処分したなかにあった。非道い状態ながらも『北の岬』は取り読み返したため,当時読んだ文庫本のまま手元にあるのはそれくらい。ハードカバーでは『背教者ユリアヌス』に『フーシェ革命暦』,どうしたわけか『時の扉』はある。一冊ごとの区別がつきづらい辻邦生のエッセー集は,幸い被害が軽かったので一抱え置いたままだ。

書店に入るたびに『安土往還記』を探したが見つからない。絶版ではなさそうなので,単に置かれていないということだろう。いつの頃からか,カウンターで本を注文しようとは思えなくなった理由はよくわからない。結局,Amazonを利用することになる。1冊だけ配送してもらうのは忍びないため,岩波ブックレットの「相模原事件とヘイトクライム」と一緒に注文した。これは店頭で一度買い逃し,その後,書店で見つけられなかった。

年末の飲み会で,Amazonプライムの話になったとき,昌己は信条としてAmazonを利用しないという。信条なのだから,その是非を問うものではない。昌己に倣うとすると,品揃えが自分の趣味と合う書店が近くにないかぎり,大規模書店で本を探さざるを得ない場合が多くなるだろう。古書店はさておき,もともと本との出会いとはそういう類のものだったと思えなくはない。加えて,「同じネット書店でもAmazon以外を使えよ」と。紀伊國屋書店やジュンク堂書店,三省堂書店のWebサイトで本を探すくらいなら,お店に足を運ぶ。しかし……。

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